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最新の肝癌の手術選択とその課題について

No.4995 (2020年01月18日発行) P.52

小笠原定久 (千葉大学大学院医学研究院消化器内科特任講師)

進藤潤一 (虎の門病院消化器外科(肝・胆・膵))

登録日: 2020-01-15

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  • 昨今,肝細胞癌は背景となる肝疾患が大きく変化しています(C型肝炎の減少および脂肪肝の増加)。また,薬物療法の進歩により旧来の肝臓内の局所制御を中心とした生存期間の延長と異なる治療戦略が構築されつつあります。そのような急速に変化する肝細胞癌治療体系において肝切除の位置づけとその課題をお聞かせ下さい。虎の門病院・進藤潤一先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    小笠原定久 千葉大学大学院医学研究院消化器内科 特任講師


    【回答】

    【有効な全身治療の登場が根治的切除の可能性を広げる】

    わが国の肝臓外科は同領域のトップランナーとして世界に貢献してきたこともあり,肝癌に対して比較的アグレッシブな治療が行われています。2017年版の肝癌診療ガイドラインにおいて肝切除の対象となる肝癌は,「肝臓に腫瘍が限局し,個数が3個以下であることが望ましい」とされ,腫瘍の大きさには制限が設けられていません。また腫瘍栓があっても門脈一次分枝までに限局するものは手術適応となりうるというのが一般的な認識です。

    近年,検診やウイルス治療の進歩によってウイルス性肝疾患を背景とする肝癌患者は減少し,脂肪肝,アルコール多飲といった生活習慣に起因する肝障害の患者が増えてきました。しかし,ウイルス性肝炎や肝硬変が減少することが必ずしも肝癌治療の安全性や手術適応の拡大につながるわけではありません。非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)のような脂肪変性の強い肝臓はもろく,出血のコントロールが困難であり,またアルコール性肝疾患では肝腫大を伴い,手術操作に難渋したり,術後難治性腹水を発症しやすかったりする傾向にあります。背景肝疾患の比率が変わっても10年前,20年前と比べて肝癌に対する手術適応や手術の難しさはそれほど変わらないというのが現場の実感です。

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