膀胱や尿管と腟が交通し,腟から尿流出を呈する病態である。わが国では骨盤内手術や放射線療法などの医原性,または悪性腫瘍の膀胱・尿管浸潤が原因と考えられる。なお,発展途上国を主とした海外では,出産・分娩を原因とすることが多い。
尿路が腟へ開口し,腟からの尿流出により発見される。
腟への開口部を同定する。膀胱腟瘻と尿管腟瘻を合併している場合や複数の瘻孔が存在することもあるため,注意する。痛みにより観察困難な場合には麻酔下に精査するとよい。
①内診:瘻孔は腟尖部へ開口していることが多い。インジゴカルミンを静脈内投与すると,腹水との鑑別が容易になる。
②膀胱鏡:膀胱内を観察すると,膀胱粘膜が引きつれて腟口へ開口している状態を観察できる。内診しながら腟尖部を触診しながら施行する。
③造影CT/MRI:腟への流出路の確認に必須と考えられる。
④膀胱造影:小さな瘻孔の場合には判別困難なことがあるため,注意を要する。また,手術療法を行う前には膀胱容量を確認する上でも有用である。
瘻孔を形成している場合には,原則として手術療法を検討することが多い。
膀胱腟瘻の場合:瘻孔が小さい場合には,自然軽快を期待して尿道カテーテルを留置して最長3カ月まで経過観察する。
尿管腟瘻の場合:逆行性尿路造影により瘻孔部を確認し,可能であれば尿管ステントを留置する。尿管ステントが挿入できた際には尿流出は明らかに減少するため,3カ月を目安として経過観察する。ただし,尿管が閉塞して腟管へ交通している場合には
尿管ステント留置は困難であり,無理なステント操作による尿管損傷の恐れがあるため,早期に手術療法を検討する。
主に消化器系または婦人科疾患が想定される。まずは原疾患の治療を最優先とし,その間は尿道カテーテルや腎瘻などの尿路変向を検討する。原因病巣の治癒切除が可能であれば,切除と瘻孔修復術を検討する。
悪性疾患の放射線治療後の周囲組織は脆弱なため,再発率は非常に高い。治療により瘻孔が増悪することもあるため,十分な説明をし経験を有して治療に臨む。
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