株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

レジオネラ症[私の治療]

No.4987 (2019年11月23日発行) P.55

石田 直 (倉敷中央病院呼吸器内科主任部長)

登録日: 2019-11-23

最終更新日: 2019-11-20

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • グラム陰性桿菌のLegionella属による細菌感染症で,病型は,肺炎と一過性のポンティアック熱に分類される。肺炎は,しばしば劇症型の経過をとり,かつては致命率の高い肺炎であったが,近年ニューマクロライド系やニューキノロン系静注抗菌薬の使用により救命率が上がってきた。Legionella属は土壌や水環境に存在する菌であり,菌体を含むエアロゾルを吸入することが感染のリスクとなる。

    ▶診断のポイント

    土壌やエアロゾルを発生するような水環境への曝露(温泉や循環式風呂入浴など)が疑われれば,レジオネラ肺炎を疑う。

    レジオネラ肺炎は,全身倦怠,頭痛,食欲不振,筋肉痛などの症状に続いて,高熱,胸痛,呼吸困難がみられる。下痢や中枢神経系の症状がみられるのも特徴である。低ナトリウム血症を認めることが特徴とされる。ポンティアック熱は,突然の発熱,悪寒,筋肉痛で始まるが,一過性で治癒する。

    レジオネラ肺炎は,胸部X線写真上,非区域性の肺胞性陰影を呈し,急速に進行し,大葉性肺炎の像をとる。菌の培養には,BCYE培地などの特殊培地が必要であるが,LAMP法などによる遺伝子診断も可能である。レジオネラ肺炎を検査所見(CRP,Na,LDH,血小板数)と臨床所見(体温,乾性咳嗽の有無)より診断する6点スコアがあり,2点以上がレジオネラ肺炎の可能性が高いとされているが,L. pneumophila serogroup 1以外の血清群による肺炎では,1点以下となることも多い。迅速診断法として,尿中抗原検出法が汎用されている。従来,L. pneumophila serogroup 1しか検出できなかったが,最近,他の血清型も診断できる迅速診断キットが発売された。レジオネラ肺炎の多くは,市中発症の孤発例であるが,菌に汚染された水環境により,院内やナーシングホーム,入浴施設などでアウトブレイクが起こることがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    急速に進行する劇症型の肺炎では必ず鑑別に入れ,有効な抗菌薬を早期にエンピリックに投与する。

    レジオネラ肺炎は,急速に進行することが多いので,診断確定あるいは疑われる例では,入院治療が望ましい。重症例では,人工呼吸管理も含めた集中治療を検討する。

    細胞内寄生細菌であるため,βラクタム系薬は無効であり,ニューキノロン系やニューマクロライド系の抗菌薬が有効である。レスピラトリーキノロンやアジスロマイシンが,細胞内や肺組織内への移行が良好であるため好んで使用されるが,他のフルオロキノロン系薬(パズフロキサシン,シプロフロキサシン)や他のマクロライド系薬,テトラサイクリン系薬も抗菌力を有する。

    抗菌薬の使用期間は定まっていないが,他の原因による市中肺炎より長く,7~14日間が推奨される。免疫不全患者ではさらに長期の投与が必要となる。

    ポンティアック熱はself-limitedな病態であり,通常,抗菌薬の使用は必要ない。

    残り1,096文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top