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音響外傷・騒音性難聴[私の治療]

No.4975 (2019年08月31日発行) P.43

曾根三千彦 (名古屋大学大学院医学系研究科頭頸部・感覚器外科学講座耳鼻咽喉科学教授)

登録日: 2019-09-02

最終更新日: 2019-08-28

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  • きわめて強大な音に曝露された後に聴覚障害を生じた場合を音響性聴器障害と総称するが,急性(狭義の音響外傷と急性音響性難聴)と慢性(騒音性難聴)にわけられる。一般に,音響外傷は予期しない瞬時の強大音曝露による障害,急性音響性難聴は予期しうる強大音響の短時間の曝露による障害が多い。

    ▶診断のポイント

    【診断】

    瞬間的な強大音に曝露された直後に難聴を発症した場合は音響外傷,数分~数時間の曝露で生じた場合は急性音響性難聴と診断する。

    騒音性難聴の診断には,職業性騒音や聴取音楽などの原因音と曝露期間の把握が必要である。

    【所見】

    聴覚障害の発現は,音の大きさ(音圧),曝露時間,個人の音響受傷性が関与し,順応・疲労・障害の3段階の感受性の減退がある。

    一過性閾値上昇(temporary threshold shift:TTS):疲労と障害の一部からなり,曝露音響の周波数帯の1/2~1オクターブ上の周波数で最大であり,音圧が強いとより閾値上昇がある。蝸牛外有毛細胞の機械─電気変換機構の関与が考えられている。

    永続的閾値上昇(permanent threshold shift:PTS):不可逆的な障害であり,有毛細胞に高度な破壊があれば,その領域の周波数の聴覚障害を生じる。長年の音響被ばくの集積として,TTSの繰り返しからPTSとして固定される。慢性の音響曝露による症例の多くは,C5dip(4096Hz)またはその近隣周波数である2000~6000Hzにdipを認めることが多く,約半数に耳鳴を認める。病理学的所見としては,内外有毛細胞の変性とらせん神経節の萎縮を認める。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    音響性聴器障害は,大きな音圧,長時間の曝露,高い周波数ほど与えるリスクが大きい。音響外傷や急性音響性難聴とも,突発性難聴に準じた早期の対応が必要である。慢性の騒音性難聴は診断時には既に固定していることも多く,急性期治療の対象とはならないが,今後の予防対策についての指導は必要である。

    騒音環境下の就労で,一定の期間継続し通常の音響曝露にて発現する急性感音難聴もある。その場合は突発性難聴に準じた対応を行う。

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