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非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の薬物療法

No.4973 (2019年08月17日発行) P.54

今 一義 (順天堂大学消化器内科准教授)

池嶋健一 (順天堂大学消化器内科教授)

永原章仁 (順天堂大学消化器内科教授)

登録日: 2019-08-14

最終更新日: 2019-08-13

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【糖尿病治療薬を中心に一定の効果あり,新規薬剤への期待も】

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の薬物療法は,混沌とした状況が続いている。2010年の大規模RCTで,ビタミンEがピオグリタゾンと同等かそれ以上の結果を示したが,治療薬の決定打とはならず,メタボリックシンドロームの合併のないNASH患者への投与が推奨されている。現時点のNASH治療は,糖尿病や脂質異常症,高血圧といった個々の背景疾患に合わせた薬物療法が主流で,それに加えてL-カルニチンやプロバイオティクスなどの治療法が試みられている。

比較的多くのエビデンスが集まっているのが糖尿病治療薬で,最近ではGLP-1受容体作動薬で体重減少,脂肪肝の改善および肝硬度低下の効果が示され,SGLT2阻害薬で体重減少と脂肪肝の改善が報告された。現在もなお,NASHの肝病態をターゲットにした治療薬の開発が,大手・ベンチャー企業を交えて盛んに行われている。

18年1月に米国肝臓病学会からNASHの“Practice Guideline”のアップデート版が“Hepatology”誌上に発表され,治療の項目には現在開発中の治療薬として,FXR作動薬のobeticholic acidとPPARα/δ作動薬のElafibranorが挙げられた1)。わが国では,NASHに対するobeticholic acidの治験は中止されたが,海外では進行中である。これからの動向が注目される。

【文献】

1) Chalasani N, et al:Hepatology. 2018;67(1): 328-57.

【解説】

今 一義*1,池嶋健一*2,永原章仁*2  順天堂大学消化器内科 *1准教授 *2教授

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