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腹部大動脈瘤のスクリーニングと治療成績─最近のエビデンス[J-CLEAR通信(104)]

No.4970 (2019年07月27日発行) P.30

中澤 達  (聖母病院副院長/J-CLEAR評議員)

登録日: 2019-07-26

最終更新日: 2019-07-24

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執筆:中澤 達 (聖母病院副院長/J-CLEAR評議員)

1 腹部大動脈瘤(AAA)の大規模臨床研究

腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm:AAA)に関する大規模臨床研究には,スクリーニングの費用対効果と,開腹手術とステントグラフト内挿術(endovascular aneurysm repair:EVAR)の治療成績比較の2種類がある。どちらもスタディデザインとその医療制度に依存し,特に前者は各国で研究結果が異なる。後者の成績比較は,デバイスの進化にも影響を受けるため,その解釈には経時的変化にも注目する必要がある。

2 スクリーニングの費用対効果

(1)AAAの予後は,女性が男性より悪い1)

AAAの予後は,女性が男性より悪いと思われていた。それを2000年以降のメタ解析で検証している。結果は,EVARの解剖学的適応は女性34%,男性54%で,女性は治療非介入率も高かった(34% vs. 19%)。術後30日死亡率は,EVAR(2.3% vs. 1.4%),開腹手術(5.4% vs. 2.8%)ともに女性のほうが高かった。女性のAAAの管理には改善の余地があった。

▶メタ解析による系統的レビュー:女性のAAA手術はEVAR形態適合率が低く,手術死亡率が高い

(2)スウェーデン人男性のAAA死亡率は,2000年初期から2015年までに減少2)

スウェーデン人男性のAAA死亡率は,2000年初期から2015年までに減少していた。

しかし,スウェーデン人を対象としたレジストベースのコホート研究で,AAAスクリーニングは,AAA死亡の減少に寄与していないことが明らかにされた。スウェーデン人男性10万人当たりのAAA死亡(65~74歳)は,2000年初期は36例であったが,2015年には10例に減少していた。死亡率の減少は全国的にみられ,AAAスクリーニング実施の有無に関係していなかった。今回の検討で,減少した要因の大半は他の因子によるもので,おそらくは喫煙の減少によることが示唆された。

▶レジストベースのコホート研究:スウェーデンにおけるAAAスクリーニングは,男性AAA死亡の減少に寄与していない

AAAスクリーニングを受けた男性が回避可能なAAA死亡は,1万人当たり2例であった。また,待機的手術のリスク増大や,過剰診断の恐れとの関連が認められ,死亡や合併症リスクを増大した回避可能な手術がそのうちの19例に行われていたという。ベネフィットは小さく,有益性と有害性のバランスは非常に悪く,スクリーニングの正当性に対する疑念を深める結果であった。10万人当たり10例の死亡という希少さで,生活習慣病予防により死亡率も低下傾向の疾患であることが原因である。

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