株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

(3)非がん性慢性疼痛治療におけるモルヒネの役割と注意点─他のオピオイド鎮痛薬も含めて[特集:意外に知られていない モルヒネによる痛み治療の問題点と実際]

No.4956 (2019年04月20日発行) P.30

廣瀬宗孝 (兵庫医科大学麻酔科学・疼痛制御科学講座主任教授)

登録日: 2019-04-22

最終更新日: 2019-04-17

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

モルヒネ侵害受容性疼痛に対して短期間の効果はあるが長期間の効果は不明である

神経障害性疼痛における効果は三環系抗うつ薬やCa2+チャネルα2δリガンドに比べて劣る

ノシプラスチックペインに対する効果はエビデンスがない

非がん性慢性疼痛で使用できるトラマドール,フェンタニル貼付剤,ブプレノルフィン貼付剤は,モルヒネやオキシコドンと比べるとオピオイド鎮痛薬使用障害の発症は少な

1. 非がん性慢性疼痛患者におけるオピオイド鎮痛薬の使用状況

がん患者の疼痛に臨床使用できるオピオイド鎮痛薬は数多く存在するが,わが国で非がん性疼痛に使用できるオピオイド鎮痛薬の種類は限られている。限られている理由のひとつは,非がん性慢性疼痛に対する鎮痛効果が不十分であるにもかかわらず,オピオイド鎮痛薬の使用を止めることができない患者が増えることが危惧されるためである1)~3)。2007年まで非がん性疼痛に使用できるオピオイド鎮痛薬は,モルヒネとコデインのみであった4)5)。しかし,2008年に非がん性疼痛にフェンタニル貼付剤の臨床使用が可能になってから,この10年の間にトラマドールとブプレノルフィンを使用できるようになった(表1)。

欧米の状況はわが国とまったく異なる。かつて「痛みのある患者にモルヒネを使用しても精神依存をきたさない」と言われた時期があり,特に北米では精神依存に対する予防処置が講じられることもなく,1990年以降にオピオイド鎮痛薬の使用量が急速に増加した。特にオキシコドンの使用量が増加し,その結果,オピオイド鎮痛薬による精神依存,乱用,嗜癖をきたす患者が増加した1)~3)。現在は「オピオイドクライシス」と呼ばれる大きな社会問題となり,オピオイド鎮痛薬使用量を減らすために大麻を鎮痛薬として使用する状況に陥っている。

しかしわが国では,非がん性慢性疼痛にオピオイド鎮痛薬を使用した場合の精神依存,乱用,嗜癖の発症に関する調査報告は少ない。わが国でも,モルヒネやコデインを非がん性慢性疼痛に使用した場合,これらの使用障害の発症率は欧米と同程度であり,その予防のための慎重な使用方法が提唱されたことはあるが4)5),非がん性慢性疼痛患者におけるオピオイド鎮痛薬使用障害は現在のところ大きな問題になっていない。その理由のひとつは,わが国ではこれまでの欧米の状況を学ぶことで,オピオイド鎮痛薬使用障害が比較的発症しにくいトラマドール,フェンタニル貼付剤,ブプレノルフィン貼付剤を,非がん性慢性疼痛で主に使用していることが挙げられる。

プレミアム会員向けコンテンツです(期間限定で無料会員も閲覧可)
→ログインした状態で続きを読む

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top