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尿検査による1日食塩摂取量の計算方法とその信頼度は?

No.4949 (2019年03月02日発行) P.58

堀越 哲 (順天堂大学医学部腎臓内科先任准教授)

登録日: 2019-03-01

最終更新日: 2019-02-26

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尿検査において,1日の食塩摂取量を推定しますが,その信頼度と計算方法についてご教示下さい。

(広島県 S)


【回答】

【随時尿を用いた計算式から推定する方法が複数あるが,いずれも誤差に留意する】

1日に摂取したNaの95%以上が腎から排泄されるため,古くから,24時間蓄尿から測定したNa摂取量の推算が最も信頼度が高いとされています。蓄尿には全量蓄尿のほか,分割採尿器(ユリンメート®P)を用いた1回の排尿ごとに1/50ずつ蓄尿する方法が行われています。

・ 推定1日食塩摂取量(g/日)=1日蓄尿量(L)×尿Na濃度(mEq/L)/17

食塩1g=Na 17mEq(17mmol)

蓄尿が可能であれば尿Na濃度の測定により容易に計算できるため,減塩指導の大きな助力となります。同時に測定できる尿中蛋白尿定量,尿素窒素量,クレアチニン(Cr)濃度により1日尿蛋白排泄量や予測蛋白質摂取量,クレアチニンクリアランスなどが計算できるため,腎臓専門医には広く用いられています。しかしながら,随時尿によるものと比べると簡便さに劣るため,日本高血圧学会「食塩摂取量評価のガイドライン2014」では高血圧専門施設における推奨評価法とされています。蓄尿日の生活が制限されてしまうため,非蓄尿日との日差変動が大きくなりがちなので,正確な蓄尿がなされたか,どのような食生活を過ごしたか,などの聞き取り調査を併用することで効果が上がります。

一般医療施設には,随時尿のNaとCr濃度を測定し,24時間尿Cr排泄量予測値を用いて1日食塩摂取量を推定する方法が,日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」で推奨されています。
計算式として,①田中法1),②川崎法2)のほか,血圧とNa・K排泄量の関係の多国間研究であるINTERSULT studyで用いられた③INTER SULT formula3)が知られており,いずれも蓄尿法とよく相関するということが報告されております。

①田中法

・ 24時間尿Na排泄量(g/日)=21.98×〔随時尿Na(mEq/L)/随時尿Cr(mg /dL)/10×24時間尿Cr排泄量予測値〕0.392

・ 推定1日食塩摂取量(g/日)=24時間尿Na排泄量(mEq/日)÷17

*24時間尿Cr排泄量予測値(mg/日)=体重(kg)×14.89+身長(cm)×16.14-年齢×2.04-2244.45

②川崎法

・ 24時間尿Na排泄量(g/日)=16.3×〔起床後第2尿Na(mEq/L)/起床後第2尿Cr(mg/dL)/10×24時間尿Cr排泄量予測値〕0.5

*24時間尿Cr排泄量予測値(mg/日):
女性=-4.72×年齢+8.58×体重(kg)+5.09×身長(cm)-74.5
男性=-12.63×年齢+15.12×体重(kg)+7.39×身長(cm)-79.9

③INTERSULT formula

男性: 23×[25.46+〔0.46×spot Na(mmol/L)〕]-〔2.75×spot Cr(mmol/L)〕-〔0.13×spot K(mmol/L)〕+〔4.10×BMI(kg/m2)〕+0.26×age(y)

女性: 23×[5.07+〔0.34×spot Na(mmol/L)〕]-〔2.16×spot Cr(mmol/L)〕-〔0.09×spot K(mmol/L)〕+〔2.39×BMI(kg/m2)〕+2.35×age(y)-〔0.03×age2(y)〕

田中法は,より簡便で随時尿検体を使用できますが,川崎法のように起床後第2尿に限定したり,Cr排泄量予測値に男女の筋肉量の差を考慮しておらず,やや誤差が大きいとされます4)。また川崎法でも,食塩摂取量の多い例では3g/日程度の誤差を認めることがあると報告されています5)

これら3つの式の検証研究結果では,AUCは0.57~0.76と過小・過大評価のリスクがあるため,集団検診などの疫学調査などに利用すべきで,個人の塩分摂取量の評価には向いていないと考察されています6)

日常診療で随時尿(起床後第2尿)検査による推定1日食塩摂取量を用いるには,誤差の出る可能性を考慮し,減塩の動機づけや減塩指導の効果判定などに使用することが望まれます。

【文献】

1) Tanaka T, et al:J Hum Hypertens. 2002;16(2): 97-103.

2) Kawasaki T, et al:Clin Exp Pharmacol Physiol. 1993;20(1):7-14.

3) Iwahori T, et al:Int J Epidemiol. 2017;46(5): 1564-72.

4) 川崎晃一, 他:日病態栄会誌. 2008;11(3):237-53.

5) Kawamura M, et al:Hypertens Res. 2012;35(6): 611-6.

6) Kelly C, et al:Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2015; 25(8):771-9.

【回答者】

堀越 哲 順天堂大学医学部腎臓内科先任准教授

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