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顔面神経麻痺への再生治療の応用

No.4944 (2019年01月26日発行) P.53

古川孝俊 (山形大学耳鼻咽喉・頭頸部外科)

欠畑誠治 (山形大学耳鼻咽喉・頭頸部外科教授)

登録日: 2019-01-29

最終更新日: 2019-01-22

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【顔面神経減荷術に再生因子を追加する】

顔面神経麻痺のほとんどがHSV再活性化によるBell麻痺であるが,その年間発症率は人口10万人当たり30~40人と比較的多い疾患である。完全麻痺例に対しては,ステロイド大量療法で治療を行うことが日本顔面神経学会作成のガイドラインにおいて推奨されており(Grade B),当科においても積極的に施行し,その有効性を報告してきた1)。しかし,顔面神経麻痺が高度に進行しelectroneurography(ENoG)値が0%となると治癒率が10%以下となり,麻痺後遺症に苦しむ患者の数が少なくない現状にある。

重症例に対して,顔面神経減荷術の追加が考えられるが,その有効性は意見がわかれている。わが国のガイドラインでは「Grade C1」,米国のAAO-HNSFガイドラインでは「no recommendation」と明記されている。一方,2012年に高度麻痺例(ENoG値5%以下例)に対し,減荷術に合わせて顔面神経にbFGF(basic fibroblast growth factor)を徐放製剤とともに投与することで治癒率が改善したと報告された2)

当科ではENoG値が5%以下になった患者に対して,当科で確立した経外耳道からの内視鏡手技を応用した低侵襲アプローチによる減荷術を行い,中耳腔へ留置したチューブより術後1週間bFGFを直接神経に投与している。これによりBell麻痺に対する改善効果が得られている。今後も顔面神経麻痺に対して種々の再生医療が応用されることで治癒率の改善が期待される。

【文献】

1) Furukawa T, et al:Otol Neurotol. 2017;38(2): 272-7.

2) Hato N, et al:Otolaryngol Head Neck Surg. 2012; 146(4):641-6.

【解説】

古川孝俊,欠畑誠治  山形大学耳鼻咽喉・頭頸部外科 *教授

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