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小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017[ガイドライン ココだけおさえる]

No.4938 (2018年12月15日発行) P.48

浜崎雄平 (佐賀整肢学園からつ医療福祉センター院長)

登録日: 2018-12-14

最終更新日: 2018-12-11

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  • 主な改訂ポイント〜どこが変わったか

    1 5歳以下の反復性喘鳴のうち,24時間以上続く呼気性喘鳴を3エピソード以上繰り返し,β2刺激薬が有効なものを乳幼児喘息と定義した

    2 薬物による長期管理が5歳以下,6~15歳群との2年齢層対応となった

    3 経口と貼付のLABAを長期管理のための基本治療薬および追加治療薬から原則除外し,新たに短期追加治療薬と位置づけたことで,薬物療法は長期管理,短期追加治療,発作治療の3本立てプランとなった

    4 乳幼児に対するβ2刺激薬の1回使用量が変更となった

    1 総論:2012から2017へ

    日本小児アレルギー学会が作成してきた「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」の基本姿勢は,乳幼児・学童期喘息の診断や治療・管理方法に関して標準的な情報を実地医家に対して提示するということであった。2017年版についてもその原則には変更がない1)

    本ガイドラインの根幹は,①治療開始の前に,小児の喘息を適切に診断し,重症度(間欠型,軽症持続型,中等症持続型,重症持続型)を正確に判定する,②治療開始にあたっては,アレルゲンや増悪因子を環境から排除し,小児気管支喘息の病態である気道の慢性アレルギー性炎症に対して抗炎症薬を適切に選択・使用する,③薬物の使用については,“真の重症度”に従い開始し,開始後はコントロール状態を継続的に評価しながら,必要最低限の薬物量で良好なコントロール状態を維持して,呼吸機能の正常化および最終的な寛解・治癒をめざす,④その目的を達成するために,医療チームと患児・家族との良好なコミュニケーションを確立し,治療・管理に対する啓発および教育活動を実施するとともに,多方面から十分な支援を行う,というものである。

    本ガイドラインは近年の小児喘息による死亡者数の減少,コントロール不良による予定外受診や増悪,長期入院患児数の減少に大きく寄与してきたと考えられる。しかしながら,小児喘息の有症率は依然5%前後あり,患児やその家族のquality of lifeの改善も十分に満足すべきものではなく2),長期予後についても真に改善が見込めるのか否か明確ではないのが実情である。

    そのような現状をふまえて,本ガイドラインは新規の治療薬の開発や治療プロトコルに関する最新のエビデンスを取り入れながら,上記の課題解決に向けて継続的に改訂されてきた。

    2017年版の特徴は,日本医療機能評価機構の医療情報サービス事業Mindsの「診療ガイドライン作成の手引き2014」が提唱しているガイドラインの作成要項に沿って作成されたことである。透明性と公平性,EBM志向を確保するために,統括委員会,作成委員会,システマティック・レビューチームの三層構造を取り入れ,患者会代表を含む外部委員も加えて作成が行われた。今回初めて,「長期管理に関する薬物療法」と「急性増悪(発作)への対応」について8項目のClinical Question(CQ)を設定し,推奨,推奨度,エビデンスレベルとその解説を行い,現時点で治療管理上,重要な問題となっている疑問に対して,小児アレルギー学会としての見解を明らかにした。

    主要な変更点は,章を統廃合して圧縮したこと,一部の情報をWEB上に移動したこと,乳児喘息と幼児喘息を一括りにして乳幼児喘息とし,乳児喘息の章を廃止して,新たに「乳幼児喘息の特殊性」の章を設けたこと,それに伴い,長期管理に関する薬物療法プランの年齢別の表を,5歳以下と6~15歳の2分類に改めたこと,経口と貼付の長時間作用性β2刺激薬(long acting β2 agonist:LABA)を長期管理薬から外して,「短期追加治療薬」として治療管理の手法に新たな概念を導入したこと,「急性発作」を「急性増悪」に変更し,年齢にかかわらず基本的に同じ対応で可としたこと,である。

    また,吸入指導を単なる手技という観点から変更し,患者教育の重要な1項目とみなして患者教育/吸入指導の章を設定した。

    薬物に関しては,今回から抗IgE抗体(オマリズマブ)を薬物療法プランの表に追加した。

    これらの変更点のうち,特に重要と思われる事項をポイント2~5として以下に解説を加える。

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