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(3)集学的治療を考慮すべき病態[特集:外科治療か内科治療か 肝癌に対する治療選択]

No.4936 (2018年12月01日発行) P.42

建石良介 (東京大学大学院医学系研究科がんプロフェッショナル養成プラン/消化器内科学特任講師)

登録日: 2018-12-03

最終更新日: 2018-11-28

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肝細胞癌は,局所根治的に治療が行われても高頻度に肝内再発をきたす一方で,肝外再発は比較的低頻度であり,他の固形癌と異なり,再発すなわち予後不良とならない

病変が肝内に限局しているうちは,切除やRFAによって肝内病変をできるだけ局所根治的に繰り返し治療するが,多発例には通常TACEが選択される

TACEが奏効しない場合,肝外転移,脈管侵襲が出現した場合は,分子標的薬を中心とした集学的治療が検討される

1. 肝細胞癌治療の現況

肝細胞癌では,たとえ局所根治的に切除が行われたとしても,5年以内に50%以上,10年で70%以上の患者で再発をきたす1)。一方,他臓器癌と異なり遠隔転移は比較的稀で,再発巣の大部分は肝内に発生する。肝内再発に対して局所根治的な治療が行われることが多く,繰り返しの治療の中で,腫瘍の局所制御が破綻するか,肝不全が進行して治療が困難になるかが生命予後を規定する。

肝細胞癌治療の3本柱は①外科切除,②ラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation:RFA),③肝動脈化学塞栓術(transcatheter arterial chemoembolization:TACE)であり,1人の患者が治療経過中にこれらすべての治療を経験することも多い。単発で肝機能良好であれば肝切除,3cm以下3個以下はRFA,それ以外はTACEとだいたいの住みわけがなされているが,実際には病変の存在部位やそれまでの経過などを考慮し治療選択が行われている。

近年有効な分子標的薬が複数登場したことで,特に門脈腫瘍栓を伴わない多発症例で,従来TACEが担当していた領域に分子標的薬の適応症例が存在するのではないかという議論がなされるようになってきた。本特集では,肝細胞癌の病態に応じた治療法の使いわけ,特により進行した症例での組み合わせ治療について解説する。

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