(岐阜県 K)
【インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用が望ましい】
世界有数の高齢先進国であり,喫煙率の高いわが国においてCOPDの患者数は増加しています。COPDの臨床において,感染を契機とする増悪は,患者のQOL,入院による医療経済,生命予後などに悪影響を与えるため,安定期からの予防が重要視されています。中でもインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの接種がCOPD患者に対して推奨されています1)。
従来からインフルエンザワクチンの接種によりCOPDの増悪頻度が有意に減少することはよく知られており,わが国でも65歳以上の高齢者にインフルエンザワクチンの定期接種が行われるようになって以降,65歳以上のCOPD患者のインフルエンザ流行期の死亡率が有意に減少しています2)。COPD患者はもちろん,同居する家族に対してもインフルエンザワクチンの接種が勧められます。
成人の肺炎球菌ワクチンに関しては,現在わが国では23価莢膜多糖体型肺炎球菌ワクチン(23- valent pneumococcal polysaccharide vaccine:PPSV23)と13価蛋白結合型肺炎球菌ワクチン(13- valent pneumococcal conjugate vaccine:PCV 13)の2種類が使用できます。前者はカバー率,後者は免疫力が高いことが長所と考えられます。2種の肺炎球菌ワクチンの具体的な選択法に関しては日本呼吸器学会/日本感染症学会・合同委員会の指針3)が示されていますので参考にして頂きたいと思います。
さらにインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用は,インフルエンザワクチン単独に比較して,COPDの感染性の増悪を有意に予防することが報告されています4)。したがってCOPD患者には,インフルエンザワクチンは毎年,肺炎球菌ワクチンは年齢も考慮しながら定期的に接種を続けることが重要です。両ワクチンを接種する年には,6日以上の間隔を空けて別々に接種するか,医師が特に必要と認めた場合には,2つのワクチンを同時に接種することができます。ただし,同じ注射器の中に両ワクチンを混ぜて接種することはできません。
インフルエンザワクチンも肺炎球菌ワクチンも接種時に高熱があって全身状態が不良な場合や,過去の接種時に重篤なアレルギー反応を生じた場合等には接種することができません。両ワクチンとも最も頻度の高い副作用は注射局所の発赤や疼痛などの反応であり,稀に重篤なアレルギー反応を生じることがあるので,接種後には一定時間院内で様子を見て,副作用が生じないことを確認してから帰宅させるのがよいでしょう。
【文献】
1) 日本呼吸器学会COPDガイドライン第4版作成委員会, 編:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン. 第4版. メディカルレビュー社, 2013.
2) Kiyohara K, et al:Eur J Public Health. 2013;23 (1):133-9.
3) 日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討WG委員会/日本感染症学会ワクチン委員会・合同委員会:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方. アップデート版. 2015.
[http://www.kansensho.or.jp/guidelines/pdf/o65haienV_150905.pdf]
4) Furumoto A, et al:Vaccine. 2008;26(33):4284-9.
【回答者】
松瀬厚人 東邦大学医療センター大橋病院呼吸器内科教授