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フランスでの抗認知症薬の保険適用除外をどう受けとめる[長尾和宏の町医者で行こう!!(89)]

No.4926 (2018年09月22日発行) P.24

長尾和宏 (長尾クリニック院長)

登録日: 2018-09-21

最終更新日: 2018-09-19

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「医療上の利益不十分」

フランス保健省は8月1日より実質的に抗認知症薬を保険適用除外とした。フランスで使われていた抗認知症薬は日本と同様、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンの4種類である。フランスでは医療技術の評価を担う高等保健機構(HAS)が薬の有用性を5段階で評価して保険償還のあり方を定期的に見直しており、有用性のレベルに応じて国が負担する割合が決まる。たとえば致死性疾患に必須の薬なら100%、通常の薬なら概ね65%を負担するという具合だ。有用性が不十分なら今回の除外措置のように国の負担はゼロとなる。HASは、4種類の抗認知症薬は患者の行動障害やQOL、死亡率への影響が確立されていない一方、潜在的に重篤な副作用があることから「医療上の利益が不十分である」と判断した。有用性が乏しい薬剤よりも介護や地域包括ケアに重点を置いた。薬物療法よりもユマニチュードなどの非薬物療法を評価した措置と言えよう。

一方、日本では4種類の抗認知症薬が現在も積極的に処方されている。医療経済研究機構のレセプトベースの調査によると抗認知症薬の処方率は、85歳以上の高齢者の17%に上るという。しかも年間処方量の半分近くが85歳以上である。過剰ともいえる処方が続いている主な理由は、専門医学会が診療ガイドラインでアルツハイマー型認知症の人への抗認知症薬の使用を強く推奨しているからであろう。

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