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変化する肝硬変の成因

No.4924 (2018年09月08日発行) P.52

吉丸洋子 (熊本大学消化器内科)

佐々木 裕 (熊本大学消化器内科教授)

登録日: 2018-09-05

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【非B非C型肝硬変が増加している】

わが国における肝硬変の成因は,B型あるいはC型肝炎ウイルスの持続感染を背景としたものが大半を占めているが,これらウイルス性肝硬変は年々減少傾向にある。一方で,ウイルス感染を背景としない,いわゆる非B非C型肝硬変が近年増加している1)。非B非C型には,アルコール性や原発性胆汁性胆管炎(PBC),自己免疫性肝炎,ヘモクロマトーシスやWilson病などの代謝性肝疾患,さらに非アルコール性脂肪肝炎(NASH)など,多岐にわたる基礎疾患を有した患者集団が含まれる。

肝炎ウイルスの高浸淫地域にある熊本においても,非B非C型肝硬変の増加は明らかである。2003年1月~17年6月に当科に入院し,肝硬変と診断された1461例を対象として成因を解析すると,B型,C型,非B非C型の割合は,09年までの前期ではそれぞれ13.2%,63.9%,20.5%で,10年以降の後期では10.9%,58.4%,30.5%であった。特にアルコール性およびNASHをベースとした割合が,前期では7.9%,2.2%であったのに対して,後期では14.1%,5.0%へと増加していた。

今後,肝炎ウイルスの感染機会の減少,ウイルスキャリアの発見と最新治療の介入といった医療環境の変化により,ウイルス性肝硬変は減少する。その一方で,アルコールや生活習慣に関連する非B非C型肝硬変はさらに増加することが予想され,早期発見と治療介入はますます重要になると考えられる。

【文献】

1) 泉 並木, 監:肝硬変の成因別実態2014. 医学図書出版, 2015, p1-3.

【解説】

吉丸洋子,佐々木 裕 熊本大学消化器内科 *教授

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