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尿路結石に対する尿路内視鏡手術の予防的術前抗菌薬の意義

No.4921 (2018年08月18日発行) P.59

井上貴昭 (関西医科大学腎泌尿器外科学講座)

東郷容和 (医療法人協和会協立病院泌尿器科)

登録日: 2018-08-17

最終更新日: 2018-08-14

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  • 感染のスペシャリストの観点から,現在のエビデンスをもとに経尿道的尿路結石除去術(transurethral ureterolithotripsy:TUL),経皮的尿路結石除去術(percutaneous nephrolithotomy:PCNL)に関して,医療法人協和会協立病院・東郷容和先生にご教示をお願いします。

    【質問者】

    井上貴昭 関西医科大学腎泌尿器外科学講座


    【回答】

    【裏付ける根拠は乏しいものの,わが国と欧米の各ガイドラインにおいて推奨されている】

    経尿道的尿路結石除去術(TUL)の周術期感染予防薬の必要性に関しては,十分なエビデンスを備えた報告はありません。単回群と非投与群とを比較した多施設ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)1)2)では,前者が後者と比較して,術後細菌尿の頻度が低いことが報告されています。この結果から予防抗菌薬は必要とされ,わが国のガイドライン3)においては単回投与が推奨されています。しかし,いずれの報告も,100例程度の少数比較であること,術後感染症の発生頻度に差がなかったことなどを考慮すると,TULにおける予防抗菌薬の必要性を裏付ける根拠は乏しいのが現状です。米国のガイドライン4)では予防抗菌薬を推奨している一方で,欧州のガイドライン5)ではそのエビデンスの低さから予防抗菌薬の推奨度はweakとされています。

    また,術後感染症の危険因子として,術前因子には尿路感染の既往や尿管ステント留置中,術中因子には手術時間や腎盂内圧などが挙げられています。手術時間を90分以内にとどめることで術後感染リスクを低下させたとする術中因子の検討6)はされていますが,術前因子である細菌尿に対して,いつから抗菌薬を開始し,いつまで投与すべきかを検討した報告はなく,今後の課題であると考えます。予防抗菌薬の種類について,米国のガイドライン4)ではキノロン系薬剤も推奨薬に含まれています。しかし,近年の耐性菌増加を考慮すると,予防抗菌薬としてキノロン系薬剤を全例に使用すべきではなく,βラクタム系薬に対してアレルギーを有する場合に限るなど,使用を制限すべきと考えます。

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