診療所経営の教科書 院長が知っておくべき数値と事例【第3版】
はじめに
第1章 数値で読み解く診療所経営
1. 診療所経営の概略
1.1 診療所の外来患者数は40人/日
診療所の平均患者数の試算◉年収にすると約2,300万円に相当◉1人当たりの診療時間は10.5分◉診療科目別にみた患者数
1.2 個人診療所の年間売上は平均8,501万円、利益は2,528万円
1診療所当たりの保険診療収入は増加◉院外処方の影響はどれくらいあるか◉収入の変化と利益への影響
1.3 初・再診料と医学管理料で粗利の4割
診療所の利益の構成要素◉疾患別にみた診療報酬の単価構成◉診療科目別にみた患者当たりの単価
2. 経営・臨床指標の目安
2.1 初診率の目安は10%
2.2 診療圏は都心で半径1〜3 km、郊外で半径3〜5 km
2.3 内科開業に必要な背景人口は2,000人弱
診療科目ごとの受療率から、必要な背景人口を導き出す◉駅前や繁華街だけが好立地ではない◉背景人口の中で、競合を強く意識する必要がある
3. 診療所財務の実態
3.1 内科診療所の損益分岐点は年収6,000万円
変動費と固定費を分ける◉変動費率と固定費から損益分岐点を計算する◉経営効率を上げるには
3.2 リース料率1.8%と金利3.1%は同じ
ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違い◉リース料率と金利の比較
3.3 借入金は売上高の1.5倍まで
3.4 設備投資は年間平均220万円
対価と償却期間に着目する◉設備投資の実態◉1,000万円以上の投資は4〜5年に一度
4. 労務にまつわる事実
4.1 人件費は売上対比50%以下に
損益計算書(P/L)の見方◉人件費率の考え方◉診療科目別に見たコスト構造の比較
4.2 看護師の人件費は年499万円で上昇中
医師の平均年収は1,378万円◉医師の給与は横ばい〜やや増加、看護師・薬剤師は増加傾向
4.3 毎年14 %のスタッフが辞めていく
医療業界の離職率はきわめて高い◉人手不足の時こそ選考はきちんと行う◉既存のスタッフを大切にする◉スタッフと情報を共有する
5. 患者の動向
5.1 外来患者の4分の1は高血圧、1割は糖尿病
生活習慣病患者数の最新動向◉外来における生活習慣病の患者シェア◉人工透析患者数の最新動向
5.2 来院頻度は平均3週間に1回
患者の実数と延べ数を知る◉患者1人当たりの来院頻度を推計する◉来院頻度の減少要因を分析する
5.3 医師1人当たり外来患者数は今後20年で10%減少
医師は年間6,000人ずつ増え続けている◉このまま医師が増え続けると、近い将来、需給が逆転する
6. 在宅医療の実態
6.1 30万人の看取りができない
看取りの場が足りない◉在宅療養支援診療所が伸び悩む理由◉機能強化型の在宅療養支援診療所とは
6.2 外来40人/日と在宅50人/月は同じ収支
在宅医療は外来に比べ、収益性が優っている◉外来診療のみに頼った経営は、今後リスクが高くなる
6.3 在宅看取りの約半数は末期癌患者
訪問診療を行っている原因疾患◉在宅看取りの死因◉在宅医療と看取りのプロセス
7. 医療機関の動向
7.1 診療所数トップ5は内科・整形外科・小児科・精神科・消化器内科
7.2 診療所の開業は年8,000件
新規開業、廃業ともに増加傾向◉開業適齢期の医師はむしろ増えている◉医師のキャリアに対する意識の変化◉医療機関の倒産は年間50件弱
7.3 診療所は増え続け、病院は減り続けている
8. 患者動向の変化を見通す
8.1 認知症患者が急増し、生産年齢人口の7人に1人に
認知症患者の居場所はどこか◉認知症は早くからの介護が必要◉認知症対策におけるかかりつけ医の役割
8.2 死因トップ3は悪性新生物・心疾患・老衰
死因別死亡率の長期推移◉死因ランキングの最新動向から読み取れること◉癌による死亡率の変化
8.3 65歳以上になると入院患者は7倍に
9. 日本の構造変化を甘く見ない
9.1 もうすぐ人口の30%が高齢者になる
今から10年後の人口構成◉医療ニーズの変化と財源不足にどう対応するか◉75歳定年なら医療制度が維持できる?
9.2 65歳以上の医療費が全体の60%を占める
9.3 医療費の税負担は国家予算の17%
17兆円もの税金が医療保険に投入されている◉医療保険制度を維持するための方策
第2章 診療所における経営戦略
1. 診療所の経営戦略とは
診療所にも経営戦略が必要か◉3つの基本戦略◉診療所経営の戦略的観点◉開業時の戦略、開業後の戦略
2. 経営戦略策定のプロセス
自院の現状把握と課題の洗い出し◉経営戦略とアクションプラン◉戦略策定のためのフレームワーク
3. 経営戦略とマネジメント
4. ウィズコロナ時代の経営戦略
コロナ禍における受診行動の変化◉ウィズコロナ時代に生き残るための経営戦略◉今後10年の変化に備える
第3章 事例でみる診療所経営のポイント
1. 本当に効果のある増患対策
1.1 地域で知られていないことを知る
自院の存在が地域で知られていないわけ◉医療機関のマーケティングの基本◉クリニックの認知度を上げるには◉患者さんの“お試し”を促す心理作戦◉継続来院していただくには地道な努力が必要
1.2 初診患者を集めなければ何も始まらない
商店街・老人会・企業への告知◉チラシ配りには“副作用”も◉医療情報の発信は効果的なPRになる◉園児健診・産業医の受け入れ、その他の対策◉カルテ開示は集患効果が絶大◉薬の宅配サービス
1.3 継続患者・再診患者こそが宝
患者さんの待ち時間を快適に◉いかに滞在時間を減らすか◉スタッフの接遇マナーはどうか◉看護師のスキルが医院の評価に直結する◉流行っている先生の診察スタイル
1.4 失敗事例から学ぶ集患のポイント
過信は禁物、院長自身が変わらなければ…◉クリニックモールを過信するな◉売上の7割は立地と医師のスキルで決まる◉開業後のマーケティングとスタッフ教育が集患を左右する
1.5 営業も重要な集患の手段
“思い入れ営業”が失敗の原因だった◉ニーズに合わせた営業方針への転換◉院内にも営業マインドを取り入れる
1.6 予約システムは診療スタイルとの相性で選ぶ
予約制の種類◉予約制を導入したクリニックの事例◉診療スタイルと予約システムの相性を考える
2. クリニックにおける競合と連携
2.1 強い競合には近づかない
患者さんは滅多なことでは“スイッチ”しない◉狭い診療圏で一番を取る戦略◉十分な市場調査で競合の状況を確認する◉個別の競合相手の特徴をしっかり把握する
2.2 見方を変えれば連携は可能
連携の必要な場面が増えている◉一定の専門性や技術があれば、連携のチャンス
2.3 ネットワークで総合診療を実現する
専門性を補う連携◉高額施設・設備の共同利用◉24時間・365日体制構築のための連携◉遠距離の専門連携◉ネットワークの中で自院が生き残るには
3. 人事管理・労務管理の表と裏
3.1 そもそも安定していないスタッフの雇用
オープニングスタッフはなかなか長続きしない◉スタッフの雇用が安定しないわけ◉雇用者側にも責任がある◉チームができれば生産性は上がる
3.2 モチベーションを上げるための仕掛け
個人面談(1 on 1)の仕組みを作る◉職場の人間関係が何より大事◉経営者が職場の雰囲気を作る◉オンタイム・オフタイムで話し合う場を持つ◉職場を乱すスタッフには毅然とした態度をとる
3.3 退職の際は、思いやりと愛情で
いきなりの退職勧奨は避けるべき◉事実を整理して、改善要望を伝える◉その職場に合う人合わない人がいる
3.4 看護師の一斉退職を止める
ある日突然、全員の退職届が出された◉なぜ事前に気づかなかったのか◉退職届の本当の理由は何か◉個人面談で明らかになったこと◉看護師長との面談が転機に◉小さなすれ違いが不満を増殖させた◉一人一人のスタッフと意思疎通を
3.5 スタッフの声にならない声を聞く
会議では院長は聞き役にまわるべき◉それは本当に「みんなの意見」か◉不満の中から「問題の本質」を見抜くには◉要求の裏に重要な課題が隠れている
4. 組織マネジメント
4.1 効果的な会議運営のポイント
会議の目的と時間をはっきりする◉ファシリテーターを据える◉会議の結果について最後に確認する◉目的に合わせて会議を設計する
4.2 活躍する事務長の条件
新規事業展開の責任者として◉スタッフ間の調整役・バックオフィスの事務責任者として◉広報兼総務全般の担当者として◉事務長が活躍できないケース◉なぜ活躍できないか
4.3 親族経営の功罪
親族間ならではのコミュニケーションエラー◉院長夫人にどこまで任せられるか◉親族経営がうまくいく秘訣
5. 生産性向上とコスト適正化
5.1 医療機器の投資判断
機器のスペックは慎重に検討すべき◉採算性だけでなく戦略的な判断が求められる
5.2 仕入れ価格、委託費のコスト削減
診療所のコスト削減はどこまで可能か◉価格交渉は時間をかけて粘り強く
5.3 人件費の適正化
多面的な人事評価を可能にする“360度評価”◉競争よりチームワークを重視することも◉臨時収入は少額でも活気につながる◉人件費適正化のために重要な5つの視点◉賃金だけに偏らない人事管理を
5.4 クリニックにおけるICTの活用とDX
クリニックにおけるICT化の現状◉まずは経営課題を整理する◉ICT化によって経営課題を解決する
6. 在宅医療への取り組み
6.1 在宅医療を提供する医療機関の類型
在宅医療のいろいろな形◉単独強化型在支診◉連携強化型在支診◉従来型在支診◉在支診の届出を行っていない診療所◉在宅医療専門の診療所
6.2 24時間の連携体制をいかにして構築するか
一人医師の診療所で24時間対応を実践するには◉訪問看護ステーションとの連携が基本◉情報共有が課題◉在宅医療専門ならば業務の内製化も◉看取り対応は地域性、個別性に配慮する◉在宅患者の絞り込みも選択肢に◉複数の医療機関で当直医を共有する
6.3 在宅医療の運営と地域連携
連携の質を高める取り組み◉多様な人材を活用する◉紙媒体の営業効果は意外に大きい
7. 地域に根ざした事業展開
7.1 医師会との適度な距離感をつかむ
住民健診や予防接種で医師会費はペイする◉医師会入会をめぐるトラブル◉医師会のバックアップを受けて開業した事例◉事前に地元医師会の雰囲気をよく調べる◉地域連携の足がかりとして医師会を活用する◉相談相手を見つける良い機会に
7.2 介護事業・住宅事業への展開
医療機関の強みを生かした介護事業◉高齢者向け住宅との事業提携
7.3 オンライン医療への取り組み
オンライン診療の制度的背景◉事例にみるオンライン診療の現状◉オンライン診療の活用方法
7.4 診療所の新たな経営戦略の事例
動画配信やSNSを活用したマーケティング強化◉グループ経営によるサービス拡充と効率化◉専門性を尖らせ広範囲に指名集客◉徹底した低投資・低コスト経営◉ICT活用による高生産性の実現