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(1)縦隔の解剖学的区分と正常像[特集:縦隔腫瘍 診断の進め方]

登録日: 2018.03.16 最終更新日: 2026.02.21

原 眞咲 (名古屋市立西部医療センター放射線診療センター長/名古屋市立大学大学院高度医療教育研究センター教授)

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古典的区分は臨床的有用性の評価は高くない

放射線科では,古くから多くの臨床症例により定められたFelson区分が使用されてきた

縦隔の区分は,基礎,臨床諸科間で共有されているとは言いがたい

わが国からJapanese Association for Research of Thymus(JART)区分が2009年に提案された

国際的には,2014年,International Thymic Malignancy Interest Group(ITMIG:イットミグ)区分がJART区分を参考に提唱された

1. 縦隔区分の歴史

現在でも解剖学や病理学の教科書に記載され,一般的にもよく知られている古典的区分(図1)では,縦隔を以下の4つの区域に区分している。すなわち,①上縦隔(胸骨柄と胸骨体の関節と第4,5胸椎椎間板とを結んだ線より頭側),②前縦隔(上縦隔の尾側,心前縁より腹側),③中縦隔(上縦隔の尾側,心陰影と重なる部分),④後縦隔(上縦隔の尾側,心後縁の背側すべて)であり,外科の一部でも食道が後縦隔と記載されている場合,この区分に準拠していると推察される。この区分は解剖学的あるいは発生学的な根拠には乏しく,実際に経験する縦隔病変の診断に際しての重要性は決して高いものではない。

    

放射線科では,Felson区分(図2)1)が40年以上前から用いられてきた。この区分では,単純X線写真左側面像を用いて,①気管の透亮像の前縁を心後縁に延長した線より腹側を「前縦隔」,②椎体前縁より10mm背側を結んだ線より背側を「後縦隔」,③その間を「中縦隔」の3部位に区分している。多数の臨床症例を単純X線写真側面像にプロットし,最も整合性の高い境界線を定めた区分であり,臨床的な有用性の高さでは定評がある。解剖学的古典的区分を否定した点が画期的と考えられる。Felson区分では,上縦隔は発生学的に妥当な境界が存在しないため独立して区分されていない。すなわち,古典的区分とFelson区分との違いを理解するためには,食道の存在部位を確認するとわかりやすい。古典的区分では食道は後縦隔に属するのに対し,Felson区分では食道は中縦隔に分類される。この結果,Felson区分では食道と気管・気管支とがいずれも中縦隔に属するが,両者が同じ前腸(fore gut)から発生することを思い起こすと,Felson区分の妥当性が理解しやすい。食道外科領域の教科書では,「胸腔内(後縦隔)経路再建術」との記載がみられる。縦隔区分における混乱を避けるためには,食道癌術式の記載には「胸腔内経路」という用語を使用するほうが望ましいであろう。

その他,Haitzman区分2),Zylak区分3),Whitten区分4)といった新たな提案がなされてきたものの,いずれも広く用いられるには至らなかった。

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