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高齢者への睡眠薬や向精神薬投与に対する転倒予防の観点からの注意点 【筋弛緩作用の少ない薬剤を成人の半量から投与するなどして,副作用の軽減をめざす】

登録日: 2017.05.10 最終更新日: 2026.02.21

藤井芳夫 (藤井内科クリニック院長) 萩野 浩 (鳥取大学医学部保健学科教授)

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超高齢化社会となった今,転倒骨折予防は在宅でのADL維持のために重要なポイントです。転倒骨折予防と薬剤療法についてNo.4850(4月8日号)本欄で述べましたが,実践的には十分ではありません。すなわち超高齢化社会と認知症は大きな問題です。不眠症や認知症の心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)で睡眠薬や向精神薬を使いたいときはよくありますが,高齢者の場合,そのような薬剤を投与すると,特に夜間トイレに行くときなど転倒のリスクが高くなるため,どうしても投与を控えることになります。高齢者のために睡眠薬や向精神薬を使用する場合の転倒予防の観点からの注意点について,転倒予防を研究されている鳥取大学・萩野 浩先生にご回答をお願いします。

【質問者】

藤井芳夫 藤井内科クリニック院長

【回答】

転倒のリスクは高齢者になるほど上昇することが知られています。一般住民を対象にした疫学研究では,60~69歳の転倒率は50歳以下に比べ約2倍,80歳以上では約3倍に高まります。転倒の危険因子は,身体機能の低下に起因する内的因子と,居住環境などに起因する外的因子とにわけられます。内的因子のひとつである薬剤の中でも,睡眠薬は転倒との関連性が高いことが知られています。したがって,睡眠薬を服用中の高齢者では転倒に十分な注意が必要です。

では,睡眠薬を中止すればよいかというとそうではありません。米国で65歳以上の老人ホーム入居者3万4163人を対象に,不眠の有無および睡眠薬使用の有無の転倒への関与について,約6カ月間の前向き研究が行われました。その結果,年齢,性別,身体機能状態,認知状態などで補正しても,不眠自体がその後に起こる転倒のリスクを高めることが示されたのです。したがって,不眠を改善することが転倒予防に重要で,高齢者の転倒リスク低減には,睡眠薬を適切に使用して不眠をコントロールすることが求められるのです。


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