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相良知安(4)[連載小説「群星光芒」259]

登録日: 2017.03.26 最終更新日: 2026.02.21

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京都の佐賀藩邸に着くと藩の公用人が待ち構えたように相良知安に告げた。

「太政官より召出し状が来て居ります」

――はて何事か?

訝しく思いつつ九条邸に設けられた太政官へ参上した。
すると、邸内の公用人から1通の辞令を渡された。そこには「元佐賀藩士相良知安、医学取調ベ御用掛トシテ御用仰セ付ケルベシ」とあった。

「新政府参与の鍋島直正侯が侍医の貴公を徴士に推挙されたのだ」

と公用人はいった。

――拙者のごとき一介の藩士が新政府で活躍する場を与えられたとは……。

知安は直正侯の配慮に胸が熱くなった。
同時に『易経』の「機を見て作つ」が頭に浮かび、「志を持つ者は機会を見逃してはならぬ。直ちに身を起こせ」と気合いを入れられた気がした。

「御用の委細は学校弁事の千種有任殿より達する」

公用人にそう教えられ、知安は弁事の宿舎である東本願寺に向かった。明治2(1869)年1月18日の寒い朝だった。
思いがけぬことに、東本願寺の僧房には佐倉順天堂で一緒に修業していた岩佐 純がきていた。

「ここでおぬしに再会するとは」

おどろく知安にむかって、岩佐はにこやかな表情で話した。

「手前も新政府の参与となられた福井藩主松平慶永侯に推挙されておぬしと同役の医学取調べ御用掛に任じられたのだ」

2人が久闊を叙していると、ほどなく学校弁事の千種有任が現れた。
日に焼けて精悍な顔立ちの千種弁事は、品定めをするように知安と岩佐を上目づかいで見てから、
「まずはおぬしらが徴士(有才の者)として召し出された経緯からお話しいたそう」
と面長な顔をひと撫でした。


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