医療DXで構築が進められている「全国医療情報プラットフォーム」のひとつに、患者の診療情報を医療機関等や患者本人が共有するための「電子カルテ情報共有サービス」があります。2026年度冬頃をめどに全国での運用開始が予定されています。本稿では、サービスの構築に向けた検討の中で浮上した課題と、その対応について解説します。
電子カルテ情報共有サービスでは、全国の医療機関等や患者本人が診療情報を共有できる仕組みの構築が進められています。対象となるのは、診療情報提供書、退院時サマリー、健康診断結果報告書の3文書と、傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、検査情報(救急及び生活習慣病)、処方情報の6情報です。医療機関から電子カルテ情報共有サービスに情報を登録し、必要に応じて全国の医療機関等や患者本人が閲覧できる仕組みです。患者本人は、マイナポータルを通じて自身の情報を閲覧することができるようになります。
検討課題の1つが、傷病名の共有です。患者本人向けの情報提供では、病名を自動的に共有するのではなく、医師が患者への説明等を行い、理解に齟齬や誤解を生じさせる恐れがないと判断した際に傷病名を共有することとなりました。また、患者が情報を誤って解釈することを避けるため、転帰情報や治療終了日等は患者本人向けの共有対象外とされました。一方、医療機関等向けには、原則として電子カルテ内で管理している傷病名を共有する方針です。このように、同じ傷病名でも、情報を閲覧する対象者に応じて取り扱いが異なります。
感染症情報についても、患者本人向けの情報提供では、医師が患者への説明等を行った上で、情報提供が可能かどうかを判断し電子カルテに登録することとなりました。一方、医療機関等向けには、電子カルテに検査結果が登録されたタイミングで共有する方針です。傷病名と同様に、患者本人への情報提供と医療機関等での診療に活用する情報共有とを区別した運用が求められます。
アレルギー情報については、医療機関間や医療従事者間で、診断や取り扱いに関する共通の理解が必ずしも確立されていないという課題があります。そこで、現場での判断のばらつきが比較的小さいと考えられる、アナフィラキシー症状が生じた(疑いを含む)アレルギー物質を対象として、情報共有を開始することとなりました。関連して、食品アレルギー情報についても、共有する品目の粒度を含め、整備・検討が進められています。
これらの課題への対応として、情報を共有するかどうかを設定する機能などが、今後の電子カルテに求められる重要な要件となります。情報共有の対象やタイミングを適切に管理できることに加え、医師が日常の診療業務の中で無理なく操作できることも欠かせません。医師の負担を増やさず、適切な情報共有を実現するためには、システムの機能だけではなく、運用面も含めたユーザインターフェースの設計が重要となりそうです。
上野智明(日本医師会ORCA管理機構株式会社取締役副社長)[医療DX][電子カルテ情報共有サービス]