すべての団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据え、2014年の医療法改正を受けて、「病床機能報告制度」と「地域医療構想」の取り組みが始まった。その目的は、将来の医療需要を見据え、病床機能の分化と連携を進めることである。2019年には、再編統合について検証を求める公立・公的医療機関等として424病院が公表され、地域の医療現場に混乱が生じた。2025年を迎え、病床機能の見直しが進む一方、急性期病床は想定より多く、急性期後の患者を受け入れる回復期リハビリテーション病棟数も十分とは言えず、引き続き調整が必要な状況にある。
こうした中、85歳以上の高齢者の増加や人口減少がさらに進む2040年とその先を見据え、「新たな地域医療構想」の策定が進められている。2026年3月には、厚生労働省の「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」がガイドライン策定に向けた取りまとめを公表した。これまでの地域医療構想では、「病床の機能分化と連携」が議論の中心だったが、新たな地域医療構想では、入院だけではなく、外来・在宅医療や介護との連携も対象となり、地域全体の医療・介護提供体制の構築をめざしている。
また、人口構造の変化や医療資源の状況をふまえて構想区域を見直すとともに、病床機能報告では従来の「回復期機能」を「包括期機能」に改め、医療機関機能報告も新設された。医療機関機能報告では、急性期拠点機能、高齢者救急・地域急性期機能、在宅医療等連携機能、専門等機能、医育及び広域診療機能といった役割を明確にする。さらに、地域の実情に応じて医療機関の連携・再編・集約化を進める方針が示されている。2026年度には構想区域や必要病床数などの検討を進め、遅くとも2028年度までに、各地域の課題に応じた対応方針を決定することをめざしている。今後、都道府県や各地域で、病院の機能転換や集約化に向けた議論が本格化するだろう。
構想区域での協議においては、次の4点が課題になると考える。①病院経営が厳しさを増す中、地域によって事情は異なり、総論では賛成でも各論では合意に至らず、「言うは易く、行うは難し」となる可能性があるのではないか。②特に人口減少が進む区域では、地域全体が縮小する中、関係者同士の話し合いだけで将来の方向性を決めることができるのか。③看護師をはじめとする医療専門職の不足や病院経営の悪化によって、想定以上に医療供給力が低下し、地域医療構想の実現が難しくなるのではないか。④介護需要を推定する際には、高齢者の数だけではなく、高齢者本人の思いや地域の実情も考慮する必要があるのではないか。
新たな地域医療構想を実現するには、国が示す方向性を一律に地域に当てはめるのではなく、それぞれの構想区域の状況や医療提供体制の変化を継続的に確認しながら、2040年に向けた取り組みを柔軟に見直していくことが必要ではないだろうか。
小野 剛(横手市病院事業管理者、全国国民健康保険診療施設協議会名誉会長)[新たな地域医療構想][ガイドライン][医療提供体制]