薬剤性内耳障害を起こす薬剤は比較的多く存在するが,代表的な薬剤として,抗腫瘍薬としてのプラチナ製剤(シスプラチン),アミノグリコシド系抗菌薬(ストレプトマイシン,カナマイシン,ネオマイシン,ゲンタマイシン等),サリチル酸製剤(アスピリン),ループ利尿薬,抗マラリア薬(キニーネ)が挙げられる。また,グリコペプチド系抗菌薬(バンコマイシン),マクロライド系抗菌薬,インターフェロン等,多様な薬剤が感音難聴をきたすことが知られている。
さらに,近年新たに甲状腺眼症に対して使用されるようになったテプロツムマブも,薬剤性内耳障害および耳管開放症を含む耳管機能障害が治療の経過中に比較的高頻度で発生することが知られており,問題となりうる。
いずれの薬剤も全身投与で使用される場合が多いが,その際に惹起される難聴は一般的に両側性感音難聴を呈する。この中でアミノグリコシド系抗菌薬やプラチナ製剤による難聴は,回復する場合もあるものの,一般的に不可逆性の難聴を呈する。一方,ループ利尿薬,サリチル酸製剤では一般的に障害は一過性であり,可逆性の難聴を生じる。
▶診断のポイント
診断にあたっては,薬剤性内耳障害を惹起する可能性のある薬剤を投与している間もしくは投与後早期の難聴,耳鳴,耳閉感等の聴覚症状の訴えにより,本障害を疑い,純音聴力検査により難聴の程度を把握する。薬物使用の経過から診断すること自体は難しくはなく,内耳障害をきたすことが知られている薬剤を使用する際には,難聴や耳鳴等の聴覚症状の訴えに注意する。また,必要に応じて定期的な聴力検査を考慮する。甲状腺眼症に対するテプロツムマブ使用では,治療前および治療中の定期的な聴力チェックが推奨されている。
一般的に,薬剤性内耳障害についてはエビデンスレベルの高い治療法は存在せず,治療よりも発症の予防が重要であると考えられる。
