2026年9月、世界経済フォーラム(WEF)が「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書2026」を発表しました。日本は145カ国中117位で、2025年の118位から1つ順位を上げたものの、依然としてG7の中で最下位です。日本のジェンダーギャップ指数は0.670で、教育や健康では男女格差が小さい一方、経済と政治における格差が大きな課題として残っています。
この指数は、経済、教育、健康、政治の4分野について、定められた指標を用いて男女間の格差を評価するものです。たとえば、「健康分野」では、出生時の男女比や健康寿命が評価対象となっています。国際比較や格差の推移を把握する上で重要な指標ですが、実社会におけるジェンダーギャップのすべてを反映しているわけではありません。
特に、健康分野で男女格差が小さいという結果だけでは、女性特有の健康課題が社会生活に及ぼす影響を十分にとらえることはできません。月経、妊娠・出産、不妊、更年期といった、女性特有の健康課題が、学業や仕事、キャリア形成、意思決定にどのような影響を及ぼしているかは、指標の評価には直接反映されていないからです。
女性が男性と同じように働き、自分の能力を発揮することができる社会をつくるには、こうした健康課題があることを前提に、それによって不利益を受けない環境を整える必要があります。医療機関への相談や治療によって症状を軽減することができる場合もありますが、十分に知られていないことなどから、不調を我慢している女性も少なくありません。経済産業省は、女性特有の健康課題による労働損失などの経済損失を社会全体で年間約3.4兆円と試算しています。こうした現状をふまえると、ジェンダーギャップ指数だけではとらえきることができない格差が、私たちの社会には存在していると言えます。
ジェンダー平等とは、単に男女を同じように扱うことではありません。性別による健康上の違いを社会が理解し、その違いが人生の不利益につながらないようにすることも、ジェンダー平等の重要な一部です。
女性が、女性特有の健康課題を理由に何かを諦めることなく、自分が望む人生を選択できる社会を実現するために、産婦人科医として、女性一人ひとりの健康をサポートするとともに、組織や社会の認識もアップデートしていきたいと思います。
稲葉可奈子(産婦人科専門医・Inaba Clinic院長)[産婦人科][ジェンダーギャップ指数]