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【識者の眼】「作られた能力差」河野恵美子

登録日: 2026.10.21 最終更新日: 2026.10.21

河野恵美子 (大阪医科薬科大学一般・消化器外科)

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共同通信社が公表している「都道府県版 ジェンダー・ギャップ指数」で、鳥取県は行政分野で5年連続1位となっている。その理由を調べる中で、鳥取県知事を務めた片山善博氏の寄稿に出会い、ある言葉に思わず目が止まった。

「作られた能力差」

1992年、鳥取県庁の総務部長に就任した片山氏は、男性職員は様々な仕事を経験する一方、女性職員は庶務を担当することが多く、経験できる仕事に偏りがあることに気づいた。その結果、様々な仕事を経験した男性職員との間に、管理職として求められる経験や能力の差が生じていた。片山氏はこれを「作られた能力差」ととらえ、人事配置を見直した。その7年後、知事に就任した頃には、多彩な経験を積んだ女性職員が育ち、管理職に登用されるようになっていたという。現在の鳥取県の姿は、こうした改革を出発点とする長年の取り組みの上にある。

「作られた能力差」という言葉を目にした瞬間、National Clinical Databaseを用いて明らかにした、男女外科医の執刀機会の格差が脳裏に浮かんだ。代表的な6術式において男女の外科医1人当たりの執刀数を比較したところ、女性は男性より執刀機会が少なく、難易度の高い手術ほどその差が大きいことが明らかになった1)。

ただ、執刀数と難易度だけで、外科医が得ている経験を十分にとらえることができるのかという疑問は残った。また、新しい術式を経験する機会が限られていれば、将来のキャリア形成に影響を及ぼす可能性がある。手術の執刀経験は技術を磨くだけではなく、学会発表や論文執筆、専門医・技術認定の取得など、その後のキャリアの基盤となる。その積み重ねが、やがてキャリアの差となって現れる。

そこで、2018年以降、急速に普及したロボット支援手術に着目し、男女の執刀機会を解析した。その結果、ロボット支援手術、腹腔鏡手術、開腹手術の順に、執刀機会の男女格差が大きいことが明らかになった。

外科における女性の施設認定代表者はいまだ少数にとどまっている。執刀機会の格差もまた、「作られた能力差」を生み出す一因となっているのではないだろうか。目の前にある「能力差」が、本当に能力そのものの差を反映しているのか。立ち止まって問い直す視点を、大切にしたいものである。

【文献】

1) Kono E, et al:JAMA Surg. 2022;157(9):e222938.

河野恵美子(大阪医科薬科大学一般・消化器外科)[作られた能力差][キャリア形成][男女格差]

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