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【識者の眼】「AIがもたらすのは、医療のディストピアか」岩田健太郎

登録日: 2026.10.20 最終更新日: 2026.10.20

岩田健太郎 (神戸大学医学研究科感染治療学分野教授)

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医学生に診断推論の実習を行っている。ご多分に漏れず、ネットでググって診断当てようぜって輩が出てくるわけだが、キーワードだけで正しい診断に至るとは限らない。「高齢者、温泉、肺炎でレジオネラ肺炎と診断できるのは国家試験だけ。キーワードだけでつなげて診断するのはご用心」と反面教師になっていた。チャッピーくんが出現しても事情はさして変わらず、結局は地に足をつけて勉強するのが大事だよね、を再認識させていた。

ところが。昨今の課金AIは驚異的に優秀になっており、妥当な情報をインプットすると、かなり確度の高いアウトプットを返してくる。勉強不足の医者なら、もう太刀打ちできないくらいの実力である。この進歩のスピードを考えると、早晩、診断や治療プランの立案・遂行において、人間の医者がAIにかなわない時代がやってくるのではないか。藤井聡太氏のような絶対的な天才ですら、AIには将棋で負けてしまうわけであって、ましてや凡人たる我々有象無象の医者ごときが、いつまでもAIに勝ち続けると考えるほうが楽観的すぎたのだ。

そうこうしているうちに、中国産のロボットの進歩が凄まじいという報道が入ってくる。現時点での能力の高さも驚きだが、その進化のスピードが凄い。現在、ロボット手術のテクノロジーはどんどん進歩しており、応用可能な手術の種類も増え続けていると伝え聞いている。こちらも、人間の外科医がロボットにはかなわなくなる時代がやってくるのではなかろうか。知らんけど。

ついでに言えば、AIもロボットもフロントランナーは米国と中国だ。日本の医療の世界にこれらが実装されるということは、日本のお金も両国にごっそり持っていかれる、さらなるディストピアの予見しか、ない。

では、AIとロボットに蹂躙(?)された医療の世界に、人間の医者が生き残る道ははたしてあるのだろうか。コミュニケーションとコンパッションとエンパシー? ダメダメ。AIは疲れないし、あきらめないし、差別もしない。患者の不安や懸念にいつまでも、何度でも丁寧に寄り添い、共感的に対応してくれる。狭いサークルで生まれ育ち、自分のカテゴリーの外にいる患者を理解もできず、共感も示せない今日日の医者では、逆立ちしたってかないっこない。

では、人間の医者の生きる道ははたして存在するのか。する、というのが私の仮説だが、その仮説はまだ未検証なままである。読者諸氏のご意見やいかに。

岩田健太郎(神戸大学医学研究科感染治療学分野教授)[AI][ディストピア][生き残る道]

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