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【識者の眼】「ジェットコースター」中村利仁

登録日: 2026.10.09 最終更新日: 2026.10.09

中村利仁 (社会医療法人慈恵会聖ヶ丘病院内科)

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カラカラと音を立ててトロッコが線路を引き上げられていき、やがて坂の頂上を過ぎて、くだりながら加速してカーブに突入していく。獲得した位置エネルギーを運動エネルギーに変えるジェットコースターは、言ってしまえば単純な乗り物です。最近では、乗降場から急加速するカタパルト式のものもありますが、そこで得た運動エネルギーでコースの最後まで走り抜けるという点では同じ乗り物です。乗客の「きゃー!」という悲鳴が遠くからでも聞こえるため、遊園地ではどこにあるのか見当がつきやすいアトラクションのひとつでもあります。

ジェットコースターは、その途中が肝心です。上下したり左右に振り回されたりするだけではなく、挙動には緩急があります。「あ、これでおしまいかな?」と思った途端に、もう一度坂を登りはじめるなんてこともあります。

小説や映画には、昔から“冒険活劇”と呼ばれる分野があります。中でも、次々にピンチが襲い、敵味方入り乱れての追跡が繰り広げられる映画は、ジェットコースタームービーなどと呼ばれます。よく知られているのは『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)などでしょうか。途中、ロマンスの花が咲きかけることもありますが、ほとんどの場合、それはまた新たな追跡劇の前触れにすぎません。小休止は、意図的に設けられているわけです。

近年の戦争では、学校、劇場、医療機関などの民間施設が攻撃を受ける事例が見られます。本来、国際人道法では、こうした民間施設は原則として攻撃の対象としてはならず、医療機関や医療関係者には特別な保護も与えられています。

それでも、相手国の社会を支える人々や、傷病人の回復を助ける医療関係者が被害を受ければ、その国の生活や医療、さらには戦争を続ける力にも大きな影響が及びます。攻撃によって直接的な被害を与えるだけではなく、社会全体に長く影響を残すことになるのです。

特に近年報告されているのが、一度攻撃した場所を、少し時間をおいて再び攻撃する「ダブルタップ攻撃」です。最初の攻撃によって生じた被害に対応するため、消防、救急医療の関係者、被害者の家族、ジャーナリストなどが現場に集まることがあります。そこを再び攻撃することで、被害がさらに拡大することが懸念されています。

日本の場合も、たとえば、大規模な災害や攻撃によって病院などが被害を受ければ、救急車やドクターカー、消防・救助の関係者が現地に向かうでしょう。本来、現場で救助活動を行う際は、安全を確保することが大前提です。しかし、救助を必要としている人がいる以上、関係者が現地に行かないという選択肢を取ることは容易ではありません。

二次的被害が起こらないことを願いながら、それでも救助活動に向かう。そこには、ジェットコースターのような「次に何が起こるかわからない」という緊張が続いているのかもしれません。

“Lord, please help me get one more.” Desmond Doss(Hacksaw Ridge, 1945)

中村利仁(社会医療法人慈恵会聖ヶ丘病院内科)[救助活動][二次的被害]

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