筆者は、ここ数年の間に、学会に参加し、医師の働き方改革等について講演する機会を何度か頂いた。その際に、日々の診療業務と並行して学会の準備をし、時には遠方の学会に直接参加することは、それが労働時間に当たるかどうかという問題とは別に、医師にとって負荷がかかると感じた。所属する学会が多い場合や海外の学会への参加の場合は、長時間のフライトや時差など、その負担も大きい。
医師の働き方改革では、時間外・休日労働の上限が設けられたため、医師が行う業務のうち、労働基準法上の労働時間に当たるものと、それ以外のものを区別することが重要になった。
では、学会参加については、どのように扱われているだろうか。
厚生労働省の「医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について」では、“所定労働時間外に行われる医師の研鑽は、診療等の本来業務と直接の関連性はなく、かつ、上司の明示・黙示の指示によらずに行われる限り、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しない”という考え方が示されている。
ポイントとなるのは、①診療等の本来業務との関連性、②上司の明示・黙示の指示の有無、である。①の本来業務について、大学附属病院に勤務する医師については、診療に加えて研究成果や教育も求められる。日中は診療業務があるため、研究活動は夜間や休日等の時間外に行わざるをえないことも多い。また、研究成果については対外的に公表するため、学会で発表したり、論文にまとめたりする。
厚生労働省は、大学の附属病院等に勤務し、教育・研究を本来業務に含む医師については、①の診療等の本来業務の「等」に、教育・研究も含まれることを、上記通達の運用上の留意事項として示している。
②の上司の明示・黙示の指示については、医師の場合、細かな明示の指示がなくても、自身で必要性を判断して行動することが当然とされてきたし、受け入れられてきた。そのため、上司の明示の指示がなくても、本来業務との関連性をふまえ、労働時間に該当するものは、適切に算入すべきである。
さらに、医師の行う活動が自己研鑽とされても、心身への負荷はかかる。そのため、医師の健康を確保するという働き方改革の目的を実現するためには、自己研鑽に割り振ることで労働時間を減少させるのではなく、医師としての活動全体に着目して、負荷がかかりすぎないように配慮することが重要である。
荒木優子(荒川・荒木法律事務所)[医師の働き方改革][自己研鑽][大学病院]