若手の臨床家や研究者にとって、学会発表は重要だ。初めて演題を出し、緊張しながら発表する。そこで先輩からコメントをもらい、他施設の臨床家や研究者と知り合う。それが次の研究につながることもある。私自身の経験からも、学会にはそうした価値があると思っている。
だからこそ、あえて問いたい。医学系学会の数が多すぎる。本当にこれでよいのだろうか。専門領域によって細分化され、周辺領域にも関連学会がある。もちろん、専門性が高度化する中で、学会が細分化することには一定の合理性がある。しかし、その結果として何が起きているだろうか。
学会は小規模化する。参加者が集まらない。演題数が不足する。実際、演題募集の締め切りが延長される学会もある。「演題が不足しています。ぜひご登録下さい」という案内が届く。発表する側からしても、ある学会での発表の焼き直しを、別の学会で発表するようなことが常態化している。
特に若手にとって、学会の負担はかなり重い。所属する学会が1つなら、それほど大きな負担ではない。しかし、似たような内容を複数の学会で発表するとなれば、準備に加えて移動の負担も増えるばかりである。
学会の統合・廃止という話をすると、反発が出るかもしれない。それぞれの学会には歴史があり、関係者が築いてきた人間関係もある。また、小規模でも個性のある学会は存在する。特定の疾患や技術に特化した学会だからこそ、濃密な議論ができることもある。単純に学会数を減らせばよい、という話ではないだろう。
統合・廃止をせずに、参加者の負担を減らす1つの方法として、関連学会による合同開催は有用だろう。近接する領域の学会が同じ時期・同じ会場で学術集会を開催する。共通するテーマについて、合同セッションを設ける。一方で、それぞれの専門領域に必要なセッションは個別に維持する。そうすれば、学会ごとの独自性を残しながら、会場費や運営費、参加者の移動負担を抑えることができる。学会を減らすのではなく、学会同士をつなぐという発想である。
今後の学会のあり方について、少なくとも次のような議論が必要だろう。第一に、他の学会との差別化を図ること。他の学会とどこが違うのかを明確にする。それができなければ、演題不足に汲々とする現状は変えられず、その学会の存在意義自体を問われることになるだろう。
第二に、「参加したい」と思ってもらえるコンテンツを提供すること。それにより、参加者の負担感は減り、満足度が向上する。わざわざ時間を使って学会会場まで行く理由は何なのか。そこでしか聞けない話がある。そこでしかできない議論がある。尊敬する研究者と直接話せる。若手が「行ってよかった」と思える、スキルアップの機会を提供できる学会には、今後、人がますます集まるだろう。そうでない学会は、いずれ自然淘汰されることになるだろう。
学会は、臨床家の知的好奇心を刺激し、若手研究者の研究を前に進めるためのプラットフォームであるべきだ。そのために、「学会はこのままでよいのか」という、少し言いにくい問いを、今こそ正面から議論すべきだろう。
康永秀生(東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学教授)[医学系学会][学会発表][学会の差別化]