骨盤内炎症性疾患(pelvic inflammatory disease:PID)は,子宮頸管より上の女性性器に及ぶ感染症の総称で,子宮内膜炎,付属器炎,卵管卵巣膿瘍,骨盤腹膜炎などを含む。主に上行感染で起こり,原因微生物はクラミジア・淋菌が1/3を占め,大腸菌などの好気性菌やBacteroidesなどの嫌気性菌,あるいはそれらの混合感染も多い。放置すると不妊,子宮外妊娠,慢性骨盤痛などの後遺症につながるため,見逃さず早期に疑い,治療を開始することが重要である1)。
▶診断のポイント
【症状】
PIDは症状が多彩である。まず,下腹痛・下腹部圧痛が必須診断基準となる。加えて,発熱,帯下の増加および悪臭,不正出血などが手がかりになる。問診では,症状の程度・性状・経過に加え,性的活動性,直近の子宮内操作,妊娠の可能性,性感染症の既往を確認する。さらに,子宮内膜症性囊胞を有する場合はPIDが重症化しやすいことから,子宮内膜症の既往歴についても問診する。
【検査所見】
ガイドラインでは,必須診断基準として「下腹痛・下腹部圧痛」と「子宮・付属器圧痛」を重視している。特に,子宮・付属器の圧痛や子宮頸部の移動痛は,虫垂炎や胃腸炎などの消化器疾患との鑑別に有用である。さらに,付加診断基準/特異的診断基準として,38℃以上の発熱,白血球数増加,CRP上昇,経腟超音波やMRIでの膿瘍像,培養・抗原検査・遺伝子検査による原因微生物同定を挙げている。腟・頸管,必要時には子宮内やダグラス窩の検体で微生物学的検査を行う。なお,頸管でクラミジアや淋菌が陰性でも,それらの上行感染を必ずしも否定できない。
