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脊髄空洞症[私の治療]

登録日: 2026.09.19 最終更新日: 2026.09.19

和田簡一郎 (市立函館病院整形外科脊椎・脊髄外科センター長)

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脊髄空洞症は,髄液循環障害により脊髄内に空洞(syrinx)が形成され,感覚障害や運動障害をきたす慢性進行性疾患である。原因としてキアリ奇形Ⅰ型が最多であり,そのほかに脊髄癒着性くも膜炎,脊髄腫瘍,脊髄係留症候群などが知られている。わが国の疫学調査では,有病率は10万人当たり約1.9人とされ1),比較的稀な疾患である。 脊髄中心部を走行する外側脊髄視床路が障害されることで,温痛覚障害を主体とする解離性感覚障害を呈することが特徴である。病態の本質は髄液流通障害であり,空洞形成そのものではなく,原因病変の治療が重要となる。キアリ奇形では後頭蓋窩の狭小化による大後頭孔部での髄液循環障害が主病態と考えられている。

▶診断のポイント

上肢のしびれや疼痛,頸背部痛,巧緻運動障害などを契機に本疾患を疑う。典型例では,温痛覚障害に対して深部感覚が保たれる解離性感覚障害や,肩から上肢にかけての宙吊り型感覚障害を認める。進行例では手内筋萎縮や痙性歩行を伴う。また,咳嗽や怒責で誘発される後頭部痛はキアリ奇形を示唆する重要な所見である。画像診断ではMRIが必須であり,T1強調画像で低信号の,T2強調画像で高信号の空洞を確認する。原因検索のため,頭蓋頸椎移行部から全脊髄の評価を行い,必要に応じて造影MRIを追加する。脊髄腫瘍が原因の場合,小さな腫瘍でも広範囲空洞を伴うことがあるため,注意を要する。一方,胎生期中心管遺残は無症候性で経過観察可能であることが多く,病的空洞症との鑑別が重要である。

▶私の治療方針・処方の組み立て方

治療方針は「原因病変の解除」と「進行性脊髄障害の予防」を基本とする。軽度感覚障害のみで画像的にも安定している症例では,保存的加療と定期MRIフォローを行う。一方,神経症状進行例,空洞拡大例,歩行障害や筋力低下を伴う例では,外科治療を検討する。薬物療法は神経障害性疼痛への対症療法が主体であり,プレガバリン,デュロキセチン,トラマドールなどを症状に応じて使用する。


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