透析患者におけるリン管理方法として,2025ガイドラインでは“適切な透析量の確保”→“食事療法”→“薬物療法”という順番で明記している(表2)2)。適切な透析量に関しては,ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)などのエビデンスが乏しく,解説およびPractice Pointの中で,リン除去を増加させる方法として透析時間の延長や透析血流量の増量が提案されている。
食事療法は基本的にリン摂取制限であるが,ポイントは「リン吸収率が高い食品を避けること」と,「栄養状態を考慮したリン制限」である。リン吸収率が高い食品は無機リン,すなわち食品添加物であり,その摂取を控えることが重要である(表3)10)。

一方,リン吸収率が低いのは植物性リン(豆類,穀類,種実類)である。植物性リンの多くはフィチン酸と結合しており,ヒトではその分解酵素であるフィターゼ活性が低いため,リンの吸収率は低いと考えられている11)。リン摂取源の違い(動物性,植物性,無機リン)が透析患者の予後に与える影響を見たコホート研究では,植物性リンの摂取は死亡リスクが低く,加工食などの無機リン摂取は死亡リスクが上昇することが報告されている12)。食品添加物に含まれる無機リンは多様であり,結着剤,冷凍変性防止,食品の変色防止,分散,保水などを目的として,多くの加工食品に含まれる。しかし,食品衛生法ではリン酸化合物の使用量の表示義務がないため,どれくらいの無機リンが含有されているかは不明である。食品添加物や無機リンの問題は,透析患者のみならず腎機能正常者にとっても,老化の観点から重要な課題と考えられる。
2025ガイドラインでは,従来の“リン含有量が高い食品を避ける”という考え方から,“リン/蛋白質比が高い食品を避ける”という考え方へとシフトしている。食物中のリン含有量と蛋白質含有量は正の相関を示すため,従来のリン制限では蛋白質摂取を制限することになり,患者の状態によっては低栄養を惹起する可能性がある。
米国DaVitaにおける検討13)では,3万75名の血液透析導入患者を対象としたコホート研究において,最初の6カ月間の蛋白質摂取量の増加/減少,血清リン値の上昇/低下の2×2=4通りで3年間の予後を見たところ,蛋白質摂取が増加し,かつリン値が低下する群で最も予後が良いことが示された。これを達成するためには,リン/蛋白質比が高い食品を避けることが重要である。同じ米国DaVitaにおける検討で,224名の血液透析患者に栄養調査を行ったコホート研究では,食事中のリン/蛋白質比が高いほど直線状に死亡リスクが上昇することが示された14)。
以上の報告を受けて,2025ガイドラインではリン/蛋白質比について日本食品標準成分表 15)をもとに表が提示された(表4)2)。リン/蛋白質比が最も高い食品は,蛋白質をほぼ含まない食品添加物(≒無機リン),一部の清涼飲料水,乳製品などである。一方,植物性リンや一部の動物性リンは,リン/蛋白質比はおおむね低い。透析期を含むCKD患者においては,リン/蛋白質比を考慮したリン制限が重要である。

※この記事は,FOCUS「CKD-MBD管理の実践〈2025ガイドラインに基づく生命予後・骨折リスクマネジメント〉」の一部を抜粋・編集したものです。
