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【識者の眼】「消化器外科における男女共同参画」河野恵美子

登録日: 2026.09.08 最終更新日: 2026.09.08

河野恵美子 (大阪医科薬科大学一般・消化器外科)

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日本消化器外科学会は1968年に発足し、およそ60年にわたり、わが国の消化器外科医療を牽引してきた学術団体である。しかし、その歩みは長らく男性中心であり、男女共同参画に対する理解が十分であったとは言いがたい。

医学界全体では、2006年に日本腎臓学会に男女共同参画委員会が、2007年に日本産科婦人科学会、日本外科学会にも同様の組織が設立されるなど、男女共同参画をめぐる動きは徐々に広がりをみせていった。こうした流れの中で、2011年頃に東京大学(現:星薬科大学)の野村幸世先生を通じて、日本消化器外科学会における男女共同参画委員会の設立を提起したが、制度化には至らなかった。

その後、2015年に女性評議員枠が設けられ、4名の女性評議員が誕生した。歴代女性評議員が2名だったことを考えれば一定の評価はできるものの、評議員全体に占める割合は1.1%ときわめて限定的であり、変化は乏しく、象徴的な段階にとどまっていた。

こうした状況を打開するため、2015年11月27日に野村幸世先生および大越香江先生(日本バプテスト病院)とともに、消化器外科女性医師の活躍を応援する会(AEGIS-Women)を設立した。発足当初は少人数での活動であったが、学会内外でのセミナー開催、ネットワーキング、メンター制度の構築、SNSやニュースレターを活用した情報発信などを通じて、男女共同参画に関する問題意識を共有し、改革に向けた土壌を形成してきた。

大きな転機となったのは、NCDを利活用した手術執刀機会および手術短期成績に関する研究を2022年にJAMA SurgeryとBMJに相次いで公表したことである。執刀機会の男女格差を可視化すると同時に、短期成績に差がないことを示した。これらのエビデンスを契機として議論は進展し、2023年には「函館宣言」が発出された。さらに、これらの取り組みは対外的にも高く評価され、AEGIS-Womenは内閣府男女共同参画局による女性のチャレンジ支援賞、平塚らいてう賞 特別賞、澤柳記念DEI賞を受賞した。

日本消化器外科学会の男女共同参画は、2020年代に入り急速に進展した。2021年に男女共同参画ワーキング・グループ(現:委員会)が設置され、2022年には女性理事が誕生した。2025年には女性評議員枠が拡大され、2025年6月時点で女性評議員は28名まで増加した。

理事長のリーダーシップが大きな役割を果たしたことは言うまでもない。一方で、本来であれば人権の観点から議論されるべき課題ではあるものの、外科医不足が深刻化し、女性外科医の割合が上昇する中で、女性の力を十分に活かさなければ外科医療そのものが立ち行かなくなったという現実が、改革を不可避なものとしたという側面も否定できない。今後は、男女共同参画を外科医不足の対応策として位置づけるのではなく、性別にかかわらず、教育・評価・登用の機会が平等に保障されるべきという前提に立って、議論していくことが望まれる。

河野恵美子(大阪医科薬科大学一般・消化器外科)[男女共同参画][女性外科医

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