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【識者の眼】「『地域医療構想策定ガイドライン』について」村上正泰

登録日: 2026.09.02 最終更新日: 2026.09.02

村上正泰 (山形大学大学院医学系研究科医療政策学講座教授)

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厚生労働省は2026年7月3日、2040年に向けた新たな地域医療構想の「地域医療構想策定ガイドライン」を公表した。今後、各都道府県で策定作業が進められることになる。検討すべき課題は多岐にわたるが、本稿では急性期医療の線引きをめぐる問題について考えてみたい。

新たな地域医療構想では医療機関機能が新設されるが、5つの機能のうち、急性期拠点機能と高齢者救急・地域急性期機能について、ガイドラインでは「両機能を一つの医療機関が報告することはしない」と明記された。専門性や診療密度の高い医療は急性期拠点機能の病院への集約化が不可欠な一方で、誤嚥性肺炎などの高齢者救急までそれらの病院に集中するのは望ましくない。その役割分担を進めようとする方向性自体は合理的である。

しかし、急性期拠点機能を担う病院も、高齢者救急・地域急性期機能を担う病院も様々であり、地域の実情などに応じて、診療機能には幅が生じる。高齢者救急・地域急性期機能の病院における救急対応能力に限界がある地域では、急性期拠点機能の病院でも、高齢者救急に対応せざるをえない。医療機関が担う機能である以上、複数にまたがることはあって当然であり、実際、在宅医療等連携機能については「複数の医療機関機能を報告することは差し支えない」としている。にもかかわらず、急性期拠点機能と高齢者救急・地域急性期機能については厳格な線引きが優先されると、かえって実態にそぐわなくなる恐れがある。

同様に、高齢者救急・地域急性期機能の病院も、いわゆる高齢者救急に限定されるものではない。急性期拠点機能の病院との役割分担の中で、症例数の多い一般的な手術などの急性期機能を担うことはありうるだろう。だが、高齢者救急だけを念頭に置いていると、一面的な議論になりかねない。ガイドラインでは、「医療機関機能は、診療報酬上の入院料の種類等のみをもって機械的に決定されるものではない」「医療機関機能と病床機能については、必ずしも一対一で対応するものではない」としつつ、「急性期拠点機能を報告する医療機関は高度急性期機能・急性期機能の病床を有し、高齢救急・地域急性期機能を報告する医療機関は包括期機能の病床を有することが想定される」としている。

新たな地域医療構想では、病床機能として従来の回復期が包括期に変更される。包括期は高齢者救急等の受け皿として急性期と回復期の機能を併せ持つ病床とされているが、ガイドラインでは、医療需要の推計にあたって、「これまで急性期と区分してきた75歳以上の患者のうち5割を引き続き急性期の需要として見込み、残りの5割の患者を包括期の需要として見込む」とされている。この比率の根拠自体もはっきりしないが、高齢者救急・地域急性期機能を担う病院で包括期病棟がどの程度広がるのかが鍵になる。他方で、高齢者救急・地域急性期機能の病院では、高齢者救急以外の一般急性期患者をどの病棟で受け入れるのかも、診療報酬上の入院料の選択を含めて、問題になりうる。

いずれにしても、役割分担の線引きは一律的には決められず、地域の実情によらざるをえない。理想型は示せても、白地に絵を描くわけではない。新たな地域医療構想の策定にあたっては、機能の幅を考慮した現実的な議論が望まれる。

村上正泰(山形大学大学院医学系研究科医療政策学講座教授)[地域医療構想][地域医療構想策定ガイドライン

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