RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)は,乳幼児期における呼吸器感染症の代表的な原因ウイルスである。一方で,高齢者,免疫不全患者,ならびに心疾患や呼吸器疾患を有する成人においても,下気道感染症の主要な原因病原体の1つであることが明らかとなっている。しかし,RSV感染症に対する特異的な治療薬はなく,治療は対症療法が中心となる。そのため,予防がきわめて重要であり,高齢者や基礎疾患を有する患者などの重症化リスク群においては,ワクチン接種が推奨されている。
▶診断のポイント
【症状】
RSVに感染すると,3~5日程度の潜伏期間を経て,咽頭痛や鼻汁などの上気道症状や発熱を呈する。健常成人のほとんどは数日間で自然に軽快する。
【検査】
臨床症状のみからRSV感染症を診断することは困難であるため,診断にはウイルス学的検査が行われる。臨床現場では,主に抗原検査と遺伝子検査が用いられる。抗原検査は小児において高い感度と特異度を有する一方で,成人では遺伝子検査と比較して感度が30%未満と低いことが報告されている1)。また,抗原検査は,1歳以上の患者に対して外来診療で実施する場合には保険適用とならない。
遺伝子検査としてはnicking enzyme amplification reaction(NEAR)法を用いた検査が保険適用となっているが,成人では入院患者であることに加え,RSV抗原検査が陰性であることが実施条件となっており,実臨床における使用には制限がある。そのため,成人では,重症呼吸器感染症を対象として保険適用となっている多項目同時測定の病原体遺伝子検査が施行された結果,RSV感染症と診断されるケースが多い。日本では,多項目同時測定の病原体遺伝子検査として,2019年11月よりFilmArrayⓇ呼吸器パネルが保険適用となっている。
