発熱は救急外来や一般外来で最も遭遇する機会が多い症候のひとつである。しかし,「発熱=感染症」と決めつけることは危険である。感染症だけでなく,悪性腫瘍,膠原病・血管炎,薬剤熱,血栓症,内分泌疾患なども発熱の原因となる。診断名だけでなく,「重症度・緊急度を優先して評価し,今,何を見逃してはいけないか」を意識して診療を進める。
まず確認すべきなのは,隔離の必要性である。COV ID-19,インフルエンザ,結核,麻疹,水痘,流行性角結膜炎などでは,診断確定前であっても,それらの疾患を疑った時点で感染対策を開始する。次に,熱源はどこにあるのかを考える。イルネススクリプト1)として,感染症に合致しない場合は,薬剤熱,悪性腫瘍,膠原病・血管炎,肺塞栓症,深部静脈血栓症,甲状腺クリーゼ,副腎不全なども鑑別疾患に挙げる。必要時は隔離し,マスクを着用させる。発熱に咳嗽,咽頭痛,発疹,結膜充血,結核を疑う長引く咳や体重減少などを伴う場合は,診察前からサージカルマスクを着用させ,可能であれば個室または隔離スペースへ案内する。麻疹,水痘,結核を疑う場合は,空気感染対策を含め,院内感染対策チームや上級医に早めに相談する。
▶病歴聴取のポイント
発症時期,悪寒戦慄,解熱薬への反応,呼吸器・腹部・尿路・中枢神経症状を確認する。高齢者では発熱が目立たず,せん妄やADL低下のみが感染症の初発症状となることもある。
また,海外渡航歴,動物・昆虫曝露,温泉・河川・土壌曝露,人工弁や人工関節などの人工物,最近の抗菌薬使用歴,免疫不全の有無の確認も重要である。
咳,咽頭痛,関節痛など複数の症状を呈している場合は,感冒,COVID-19,インフルエンザなどのウイルス感染症を考慮し,病歴上それらの疾患の可能性がないかを確認する。
▶バイタルサイン・身体診察のポイント
血圧,脈拍,呼吸数,SpO2,意識状態を確認する。身体診察では,項部硬直,心雑音,呼吸音,CVA叩打痛,腹膜刺激症状,皮疹,点状出血を見る。
