私は人を管理するのが得意ではなく、また、人が好きでもないので管理職には向いていない。向いていないにもかかわらず、32歳から亀田総合病院で部長職、36歳から教授になり、かれこれ20年以上も管理職をしている。この領域における人材不足ぶりが窺われる(笑)。
とはいえ、私のようなダメ管理職でも絶対に曲げてはならぬ信条はある。
それは、部下は、命がけで守ること。
患者や他部署からクレームが入った場合は、責任を取るのは私であり、部下を切り捨ててトンズラしてはならない。これは、上司たるものの最低限の心構えである。私が尊敬するリーダーたちは全員、例外なくそうだった。普段、どんなに偉そうなことを言っていても、いざというとき尻尾を巻いて逃げ出す奴らにリーダーたる資格はない。
昔の日本は縦割り蛸壺で、大学病院は特にそうだった。老害医師はコンサルテーションの概念を理解せず、若手医師から感染症内科にコンサルが入り、うちの部下がカルテを書いたときに「なんでうちの患者にカルテを書くんだ」と怒鳴りつけるようなヤツがいた。ま、今ならパワハラ確定事例だけどね。
すぐに病棟に飛んでいって、「うちの若いもんに何してくれとんじゃ、ごりゃ」とまでは言わなかったが、その一歩手前くらいで戦ったりしたものだ。私もまだ若かった。
ことほど左様に、部下が困っているときは上司が必ず責任を取り、守らなくてはならない。もちろん、当方がしくじっている場合は隠蔽せずに謝罪するのが筋だが、頭を下げるのも当然、上司の仕事である。
ところが、昨今の日本では、部下を人身御供にして、リーダーが真っ先にトンズラするのが常態化している。「あれは部下が全部やったんです。私は知りません」と逃げるのである。
もちろん私は、国際刑事裁判所(ICC)所長の赤根智子氏の話をしている。
赤根氏は東京大学法学部を卒業後に検事となり、安倍晋三首相(当時)の推薦を受け、岸田文雄外務大臣(当時)が指名してICC裁判官に就任した。
2024年に選挙でICC所長に選出されたときは、「我が国の赤根智子ICC判事が裁判所長に選出されたことを歓迎します」と外務大臣が談話を残している。
ところが、米国が赤根氏を制裁対象に指定すると、首相も外務大臣もほぼほぼ知らん顔である。まったく情けない。
個々人を守れない者に、人の上に立つ資格はない。海外で戦う立派な日本人を守れない政治家は、政治家失格だ。関係各氏、恥を知るべし、である。
岩田健太郎(神戸大学医学研究科感染治療学分野教授)[リーダー][国際刑事裁判所][ICC]