Point
6分野の医療職(看護師,栄養士,助産師,薬剤師,泌尿器科医,産婦人科医)において葉酸認知率および葉酸サプリメント推奨率を,2002・2017・2025年の時点で調査した。前者は42%・70%・95%,後者は18%・34%・62%であった。
経産婦において2024~2025年の時点で調査した。葉酸認知率および葉酸サプリメント摂取率は,神経管閉鎖障害(NTD)児群では39%・33%,正常児群では67%・41%であった。
我々の10年間(2014~2023年)のデータでは,NTD児発生率(平均値)は8.83/1万分娩であり,日本産婦人科医会(JAOG)では5.05/1万分娩であった。前者は後者の1.7倍高値であった。
1. 緒言
英国で実施された葉酸と神経管閉鎖障害(neural tube defects:NTD)に関するランダム化比較試験の結果が1991年に報告された1)。本研究では,過去にNTD児を妊娠した経産婦1817例を対象に,7カ国(33センター)で葉酸4mg/日またはプラセボを投与し,再発予防効果を検討した。内服期間は直近の月経の1日目から妊娠12週までとした。葉酸投与群ではNTDの再発が対照群に比べて72%低下した。
2000年に厚生省(現厚生労働省)は,NTD児発生予防に関する勧告2)を公表した。その骨子は,①妊娠を計画する女性は妊娠前から妊娠3カ月にかけて,栄養バランスの取れた食事に加えて葉酸サプリメント0.4mg/日を摂取すること,②NTD児の妊娠既往歴を有する女性は,医師の指導下で葉酸サプリメントを摂取すること,である。2008年に発行された日本産科婦人科学会および日本産婦人科医会(Japan Association of Obstetricians and Gynecologists:JAOG)による『産婦人科診療ガイドライン─産科編2008』3)によれば,NTD児の妊娠既往女性に対して,妊娠前から葉酸サプリメント4mg/日(日本では5mg製剤1錠が用いられる)の投与を推奨している。JAOGは奇形児総数,出産児総数などを1975年以降,約50年にわたり継続して報告している4)。
2. 対象と方法
調査の対象と方法は下記の3点とした。
(1)6分野の医療職(看護師,栄養士,助産師,薬剤師,泌尿器科医,産婦人科医)を対象として,2002年,2017年および2025年の時点で,葉酸に関するアンケート調査を実施した。調査項目は①葉酸がNTD児の発生リスクを低減することを認識しているか,②葉酸サプリメントの摂取を若年女性に推奨しているか,の2項目とした。各調査の回答者の内訳を表1に示した。

(2)NTD児を分娩または人工妊娠中絶した既往を有する経産婦(NTD児群)および正常児を分娩した経産婦(正常児群)に対し,複数期間(2001~2006年,2007~2012年,2024~2025年)にアンケート調査を実施した。調査項目は①葉酸がNTD児の発生リスクを低減することの認知,②妊娠前の葉酸サプリメント服用の有無,とした。回答者数はNTD児群が205例,155例,36例,正常児群が988例,1345例,194例であった。
(3)我々は10年間(2014~2023年)におけるNTD児の発生状況を,無脳症および二分脊椎に分類し,JAOGの報告データと比較した。我々のデータでは10年間の出産児総数は216万1339名,NTD児総数は1909例であり,平均年間NTD児発生率は8.83/1万分娩であった。なお,平均参加病院数は401施設であった。JAOGでは同期間における出産児総数は110万5084名,NTD児総数は558例,平均年間NTD児発生率は5.05/1万分娩であり,平均参加病院数は201施設であった。統計的検討はカイ2乗検定およびMann-WhitneyのU検定を用いた(StatView 5.0)。本研究は2025年4月に熱田リハビリテーション病院倫理委員会の承認を得た(承認番号:2025-01)。
3. 結果
(1)医療職の葉酸認知率および葉酸サプリメント推奨率(図1,2)
上述の6分野の医療職を対象に,葉酸認知率および葉酸サプリメント推奨率を調査した。葉酸認知率(平均値)は,2002年42%(12~76%),2017年70%(41~100%),2025年95%(81~100%)と経時的に上昇した。葉酸サプリメント推奨率は,2002年18%(4~39%),2017年34%(12~58%),2025年62%(42~77%)と上昇した。

