乳様突起炎は急性中耳炎の合併症の1つで,炎症が鼓室を超えて乳突洞や周囲の乳突蜂巣にまで進展した状態である。小児に好発し,進行すると骨を破壊して側頭骨内外の組織に炎症が及び様々な症状をきたす。亜急性の炎症が乳様突起のみに残存し,鼓膜所見が正常化したにもかかわらず骨破壊をきたす場合もある。中耳炎歴がない乳突蜂巣発育の良好な耳は骨が薄いため,いったん本疾患に罹患すると重篤な合併症をきたしやすい。
急性中耳炎の最重症例として取り扱い,ガイドライン1)に沿った抗菌薬の経静脈投与と鼓膜切開を行うが,耳後部骨膜下膿瘍や骨破壊をきたした場合には切開排膿や乳突削開術を要する。
▶診断のポイント
【症状】
急性中耳炎に続発することが多く,耳痛,発熱,耳漏を呈する。特徴的な症状としては耳後部(乳様突起部)の疼痛がある。耳後部リンパ節炎との鑑別が必要であるが,乳様突起の叩打痛がある場合は本疾患を疑う。炎症が耳後部の皮下組織に及ぶと皮膚の発赤腫脹が生じ,耳介が突出して立ち耳のようになる(耳介聳立)。骨膜下膿瘍を形成すると波動を触知する。合併症としては内耳障害,顔面神経麻痺に加え,頭蓋内に炎症が波及すると硬膜刺激症状や頭蓋内圧亢進症状などの重篤な症状を呈する。
【検査所見】
視診で鼓膜は急性中耳炎の所見を示すことが多いが,前治療で鼓室内のみが消炎され正常鼓膜を呈する場合もある。画像診断としてはCTが最も有用であり,乳突部を充満する軟部組織陰影を認める。耳後部皮下組織の肥厚があり,触診や穿刺で膿瘍の有無が診断できない場合は造影CTを考慮する。時に乳突蜂巣構造や皮質骨,天蓋,後頭蓋窩などに骨破壊をきたす。S状静脈洞の壁に骨破壊がある場合は血栓の有無を造影CTで確認する。頭蓋内への炎症波及を疑う場合は頭蓋内膿瘍の有無を造影MRIで確認する。
