睫毛内反とは,小児・若年者にみられる生来の“さかさまつげ”であり,睫毛が眼表面に触れて,角結膜の上皮障害をきたす病態である。先天眼瞼内反(症)と呼称されることもある。睫毛内反は,上眼瞼よりも下眼瞼に,また,耳側よりも鼻側により強くみられる傾向がある。日本人を含むアジア人種に多く,一方で,欧米では少ないとされる。睫毛内反の発症機序としては,眼瞼前葉(眼輪筋)が眼瞼後葉(瞼板)に対して余剰であることや,下眼瞼牽引筋腱膜(上眼瞼では眼瞼挙筋の挙筋腱膜)と瞼板との連絡の脆弱性が示唆されている。
▶診断のポイント
睫毛内反の治療の原則は手術であり,その重症度によって手術適応を考える。その際にまず重要なのは視力であり,角膜上皮障害により矯正視力が1.0未満となっていると考えられる症例では手術の適応とすべきである。また,矯正視力が良好であっても角膜の混濁や血管侵入がみられるような症例や,流涙,異物感,充血などの症状が顕著な場合には手術適応となる。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
視力測定が可能となる幼児期において矯正視力が不良で,その原因が睫毛内反と考えられる症例では手術の絶対適応としている。睫毛内反は発育とともに自然に改善する傾向があり,日本人の睫毛内反に関する報告によれば,発症頻度は0歳時には40%以上であるが,5歳頃には数%程度にまで低下し,10歳以降では2%程度で頭打ちとなる1)。視力の発達を考慮すると,小学校就学時以前の視力が1.0未満の症例では速やかに手術を計画すべきである。また,視力の評価が不確かな3歳未満の症例においても,角膜障害や流涙が顕著な場合は早期の手術を検討する。手術を行わない軽症例での保存療法や術前の待機においては,必要に応じて角結膜炎に対してヒアルロン酸や抗菌薬を処方する。
