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【識者の眼】「支払基金に勝訴したクリニックに拍手!」康永秀生

登録日: 2026.08.19 最終更新日: 2026.08.19

康永秀生 (東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学教授)

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Yahoo! ニュースで実に痛快なニュースを発見した。

都内の眼科クリニックの院長が、診療報酬の減額査定を不当として社会保険診療報酬支払基金(以下、支払基金)を相手に訴訟を提起し、東京地裁で勝訴したという。

過去に同クリニックでコンタクトレンズを処方された患者が、4年以上経過した後、別の診療目的で来院したため、クリニックは「初診料」を請求した。ところが支払基金は「再診」として減額査定したという。東京地裁は、2回目の受診は「診療継続中とは評価できず、医学的に初診と言われる診療行為に当たる」と判断した。

かなり前に、コンタクトレンズ販売店に併設された眼科による不適切な診療報酬請求が問題となり、その対策としてコンタクトレンズ検査料が設けられた。当該検査料を算定した場合には、初診料ではなく再診料を算定する取り扱いとなっている。しかし、それは2回目もコンタクトレンズ処方に関する診療を行った場合であって、それ以外の診療にまで適用されるものではないはずである。

ニュース記事には、クリニック側が「『巨額な診療報酬の支払を長期間大規模に免れていた疑いがある』と指摘し、『一連の行為は(詐欺罪などの)刑法上の犯罪に該当する可能性があるため、事実関係を徹底して捜査し、関係者の刑事責任を明らかにされたい』として、東京地検に告発状を提出」とまで書かれている。

いやはや、何とも痛快であり、溜飲が下がる思いである。このクリニックの院長に拍手を送りたい。誰が見てもおかしい、まさに「医師を馬鹿にしている」と言いたくなるような査定に対して、裁判所が明確な判断を示したのである。問題は金額の多寡ではない。正当な診療は適切に評価されなければならない、という根本的な原則の重要性を示した判決と言えよう。

おそらく、眼科に限らず、様々な診療科でも同様の不当査定が各地でくすぶっているのではないだろうか。支払基金の査定ルールが、都道府県によって異なることは、医療現場ではよく知られている。これもまた、不可解な話である。学会ガイドラインで推奨されている診療であっても、ある県では査定され、別の県では査定されないことがある。ガイドラインが十分に参照されず、いわゆる「ローカル・ルール」が何となく形成されているケースもあるのかもしれないが、その実態は外部からは見えにくい。

別の論点になるが、このニュースを読んで改めて感じたのは、初診料や再診料が十分に評価されているとは言いがたいということである。医師による基本診察の価値が、低く見積もられているように思える。問診をはじめとする基本診察は、医師が学生時代から徹底して学ぶ診療の基本であり、その重要性は今も変わらない。画像診断が進歩し、AIが普及したとしても、基本診察の重要性は揺るがない。丁寧な問診には時間も知識も必要である。それに見合った適切な評価がなされてしかるべきではないだろうか。

康永秀生(東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学教授)[支払基金][基本診察

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