代替薬を使う前に考えること
なぜ抗菌薬に第一選択薬と代替薬(第二選択以降の薬剤)との区別があるかといえば,それは,第一選択薬が代替薬に比べて優位性を持っているからである。たとえば,臨床研究でのエビデンスや使用経験が豊富であるか,薬理学/薬物動態学的な欠陥がないか,コストが妥当であるかといった観点で見ていくと,やはり第一選択薬が合理的であることがほとんどである(ただし,ガイドライン作成委員が製薬会社との利益相反を有していることがあり,その場合は慎重に解釈すべきである)。
したがって,代替薬を使用する場合には,第一選択薬と比べてどこが劣っているのかをあらかじめ理解しておく必要がある。ここでは,特に見落としやすいポイントを3つ挙げてみた。

(1) 本当に抗菌薬が必要な状況か
第一選択薬を使用する際にも当てはまることだが,目の前の患者さんの病態が本当に抗菌薬での治療を要するものであるかを再確認しておきたい(表1)。たとえば,うっ滞性皮膚炎を蜂窩織炎と見なして抗菌薬で治療しようとしていないか。無症候性細菌尿を膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症と見なして抗菌薬で治療しようとしていないか。かぜ症候群を溶連菌咽頭炎や肺炎と見なして抗菌薬で治療しようとしていないか。こうして検討してみると,抗菌薬治療の適応だと思っていた状況が,そうでなかったということがよくある。

(2) 抗菌薬の用量や治療期間が適切か
医療機関内の第一選択薬の在庫が不足してしまい,第一選択薬で細菌感染症の治療を開始したものの,途中から代替薬での治療に切り替えざるをえないという状況もあるだろう。このような場合でも,抗菌薬の用量や治療期間を再確認することで,実は在庫の第一選択薬だけで治療を完遂できてしまう可能性がある。たとえば,血清クレアチニン値を確認したら,腎機能障害が判明し,1日当たりの抗菌薬用量を減らすべきであることに気づくかもしれない。あるいは,ガイドラインを確認したら,本来であれば5日間の抗菌薬治療ですむはずの市中肺炎に対して,10日分の処方箋を発行していることに気づくかもしれない(表2)6)。近年では“The shorter,the better”のスローガンのもと,抗菌薬での治療期間を短縮しようというトレンドがある。これらの場合には,抗菌薬の総使用量を削減することができるため,代替薬に頼らずに第一選択薬で押し切ることができるかもしれない。


(3) 代替薬に問題がないか
感染症を治療するにあたって,患者背景,感染臓器,原因微生物の三大要素を明らかにすることが望ましい。これは,第一選択薬を使用するときだけでなく,代替薬を使用するときにも当てはまる(表3)。たとえば,QT延長症候群である患者さんへのQT延長を助長する抗菌薬(例:キノロン系,マクロライド系)の投与は慎むべきである。髄膜炎や急性前立腺炎の患者さんに対して,髄液や前立腺への移行性の低い抗菌薬の投与は好ましくない。大腸菌の耐性化が著しい地域では,抗菌薬の選択肢が少なくなるため,アンチバイオグラムを確認する。さらに,患者さんから過去に検出された細菌の種類や薬剤感受性も確認する。このように,代替薬を選択するにあたって,感染症診療の三大要素に照らして妥当性を検討する。

本編では,本記事の内容に加えて,「主要な抗菌薬の代替薬」や「代替薬を学ぶ意義」なども詳しく掲載しています。
