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本当に抗菌薬が必要な状況⋯⋯?

登録日: 2026.08.20 最終更新日: 2026.08.20

伊東 完 (東京医科大学茨城医療センター総合診療科臨床講師)

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代替薬を使う前に考えること

なぜ抗菌薬に第一選択薬と代替薬(第二選択以降の薬剤)との区別があるかといえば,それは,第一選択薬が代替薬に比べて優位性を持っているからである。たとえば,臨床研究でのエビデンスや使用経験が豊富であるか,薬理学/薬物動態学的な欠陥がないか,コストが妥当であるかといった観点で見ていくと,やはり第一選択薬が合理的であることがほとんどである(ただし,ガイドライン作成委員が製薬会社との利益相反を有していることがあり,その場合は慎重に解釈すべきである)。

したがって,代替薬を使用する場合には,第一選択薬と比べてどこが劣っているのかをあらかじめ理解しておく必要がある。ここでは,特に見落としやすいポイントを3つ挙げてみた。

関連書籍 レジデントのためのこれだけ抗菌薬:高野哲史著,B5変型判,304頁。抗菌薬はもちろん,抗真菌薬,抗ウイルス薬,それらを使いこなすための土台となる感染症診療の基本的な考え方,臨床で出会う主要な微生物などを紹介。

(1) 本当に抗菌薬が必要な状況か

第一選択薬を使用する際にも当てはまることだが,目の前の患者さんの病態が本当に抗菌薬での治療を要するものであるかを再確認しておきたい(1)。たとえば,うっ滞性皮膚炎を蜂窩織炎と見なして抗菌薬で治療しようとしていないか。無症候性細菌尿を膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症と見なして抗菌薬で治療しようとしていないか。かぜ症候群を溶連菌咽頭炎や肺炎と見なして抗菌薬で治療しようとしていないか。こうして検討してみると,抗菌薬治療の適応だと思っていた状況が,そうでなかったということがよくある。

(2) 抗菌薬の用量や治療期間が適切か

医療機関内の第一選択薬の在庫が不足してしまい,第一選択薬で細菌感染症の治療を開始したものの,途中から代替薬での治療に切り替えざるをえないという状況もあるだろう。このような場合でも,抗菌薬の用量や治療期間を再確認することで,実は在庫の第一選択薬だけで治療を完遂できてしまう可能性がある。たとえば,血清クレアチニン値を確認したら,腎機能障害が判明し,1日当たりの抗菌薬用量を減らすべきであることに気づくかもしれない。あるいは,ガイドラインを確認したら,本来であれば5日間の抗菌薬治療ですむはずの市中肺炎に対して,10日分の処方箋を発行していることに気づくかもしれない(26。近年では“The shorter,the better”のスローガンのもと,抗菌薬での治療期間を短縮しようというトレンドがある。これらの場合には,抗菌薬の総使用量を削減することができるため,代替薬に頼らずに第一選択薬で押し切ることができるかもしれない。

関連コンテンツ 抗菌薬長期投与時の副作用対策:浦上宗治著,A4判,17頁。腎障害,脳症・小脳失調,QT延長症候群など,抗菌薬の長期投与時において特に注意したい副作用,見逃されやすい副作用について,主な「原因薬剤」や「早期発見のポイント」を中心に解説。

(3) 代替薬に問題がないか

感染症を治療するにあたって,患者背景,感染臓器,原因微生物の三大要素を明らかにすることが望ましい。これは,第一選択薬を使用するときだけでなく,代替薬を使用するときにも当てはまる(3)。たとえば,QT延長症候群である患者さんへのQT延長を助長する抗菌薬(例:キノロン系,マクロライド系)の投与は慎むべきである。髄膜炎や急性前立腺炎の患者さんに対して,髄液や前立腺への移行性の低い抗菌薬の投与は好ましくない。大腸菌の耐性化が著しい地域では,抗菌薬の選択肢が少なくなるため,アンチバイオグラムを確認する。さらに,患者さんから過去に検出された細菌の種類や薬剤感受性も確認する。このように,代替薬を選択するにあたって,感染症診療の三大要素に照らして妥当性を検討する。

アンチバイオグラム
院内や地域で分離された細菌ごとに,各種抗菌薬に対する感受性率を集計し,表やグラフで示したもの。感染症の初期治療時に,仮に起因菌を特定できていない場合でも,患者背景や感染臓器から想定される起因菌に対する適切な抗菌薬を選択する上で参考にすることができる。薬剤耐性や感受性の傾向を把握し,抗菌薬使用の適正化や感染管理にも活用される。
※この記事は,FOCUS『供給不足でも迷わない! 抗菌薬代替療法』の一部を抜粋・編集したものです。
本編では,本記事の内容に加えて,「主要な抗菌薬の代替薬」や「代替薬を学ぶ意義」なども詳しく掲載しています。

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