2025年12月に成立した「医療法等の一部を改正する法律」のうち、オンライン診療に関する規定などが2026年4月に施行された。これまでオンライン診療は、医師法における対面診療の原則の例外と位置づけられ、厚生労働省の指針の解釈・運用によって実施されてきたが、医療法上に定義され、「例外」から「制度」へと位置づけが変わった。同時に、「オンライン診療受診施設」が新設され、駅やコンビニ、 公民館など、医療機関以外でも診療を受けられる環境が整備された。医師の常駐は不要であり、設置者は法人でもよく、医師資格も要しないとされた。
利便性という点では、確かに前進だろう。しかし、営利企業も設置者となりうることには大きな懸念があるのではないだろうか。実際、社会保障審議会医療部会でも、営利を過度に追求した診療や、ルールを逸脱した事例が増えることへの懸念が示されている。そもそも、わが国では、医療機関の非営利性が医療提供体制の基本原則とされてきた。しかし、営利企業が参入できる余地が生まれたことで、医療よりも利益が優先されるようになれば、過剰な受診勧奨や、安易な処方箋・診断書の発行などにつながる恐れがある。
こうした営利企業主導のオンライン診療は、地域医療との連携を欠きやすいという点にも問題があると考える。患者を継続的に診療してきたかかりつけ医や、高次医療機関との連携が稀薄であり、一方的に「あとはよろしく」と言わんばかりの紹介状だけが届いたという話は、現場でもしばしば耳にする。
また、営利企業が関与しない場合であっても、不適切なオンライン診療が存在することはよく知られている。社会保障審議会医療部会では、電車やタクシーの広告に「オンライン診療で診断書をすぐ発行します」といった表現が見受けられ、きわめて不適切である、との指摘もなされた。さらに、全国対応をうたう都市部の心療内科が、オンライン診療のみで安易に休職診断書を発行した結果、十分な連携が図れない地方の産業医が対応に苦慮しているという事例も耳にすることがある。患者の生活背景や地域の事情を十分に把握しないまま、継続性を欠く医療が、利便性や営利性を優先して広がれば、地域医療そのものが損なわれる危険性が高まるのではないだろうか。
不適切な事例には、都道府県が立入検査や是正命令などによって対応できるとされている。しかし、権限があることと、実際に適切な監督・指導が行えることは別である。加えて、医師会などとの連携が十分でなければ、行政は問題が生じていること自体を把握できていない可能性もある。
法制化そのものは望ましい一歩である。だからこそ、営利や利便性だけが独り歩きしないよう、かかりつけ医や産業医を含めた地域医療との連携、さらには行政と医師会との連携をいっそう強化していくことが重要であると感じている。
土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[オンライン診療][地域医療連携][かかりつけ医]