肩石灰沈着性腱炎は,腱板内に炭酸アパタイトからなる石灰が沈着し,急性の強い肩痛をきたす疾患で,40~60歳の女性に多い。多くは自然吸収に向かうが,急性期には夜間も眠れないほどの激痛を伴うことがある。石灰が存在していても必ずしも痛みの原因になっていない場合もある。
▶診断のポイント
典型例では,急な肩の激痛と夜間痛・可動域制限を主訴として受診し,外転90度前後でのpainful arc signを認める。拘縮が顕著な凍結肩に比べ,可動域が他動的には比較的保たれる点が鑑別の一助となる。単純X線(正面・Y-view)で大結節周囲の石灰陰影を確認することが基本である。高齢者や慢性例では腱板断裂や関節症の合併がないか,エコーやMRIで確認する。炎症反応は軽度上昇にとどまることが多く,発熱や著明なCRP上昇を伴う場合は化膿性肩関節炎などを除外する。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
自然経過で数カ月~数年かけて石灰が縮小・消失し,無症候化することも少なくない。一方で,急性期の疼痛は日常生活動作を著しく障害するため,症状コントロールが治療の中心となる。初期治療は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェン,安静(必要に応じて三角巾短期使用)と理学療法を行う。疼痛が強い症例では,肩峰下滑液包内注射,エコーガイド下洗浄,体外衝撃波などの低侵襲治療を検討する。ランダム化比較試験をまとめた最近のシステマティックレビューでは,注射,体外衝撃波,手術はいずれも痛みと機能の改善に有効であり,まずは非手術的治療を段階的に行い,長期の難治例に対して関節鏡視下石灰除去術を検討することが勧められている1)。
