小児の脳死下臓器提供の現状と課題,および最新の知見についてご教示下さい。
岡山大学病院・塚原紘平先生にご解説をお願いします。
【質問者】
尾迫貴章 おさこ小児科クリニック院長
【回答】
【近年,提供数は増加しているが待機患者も増加しており移植を受けられる機会は依然少ない】
日本における小児の臓器提供は,2009年の臓器移植法改正によって,家族の承諾で15歳以下の脳死下臓器提供が可能になりました。2011年に初の提供が行われて以降,年間の提供例は数件にとどまっていましたが,近年は年間10例を超えるようになりました。しかしながら,小児の移植待機者は現在も200人以上いるので,国内で脳死下臓器提供を受ける機会は限られています。このため,待機できずに渡航移植を選ぶ患者も後を絶たず,患者本人と家族に多大な精神的負担と高額な医療費の負担が生じています。
臓器提供が少ない理由として文化的・倫理的な課題が挙げられますが,最も深刻なのは医療体制の不備です。全国の5類型施設のうち臓器提供体制が整っているのは49%,15歳以下の提供が可能な施設は32%にとどまります1)。また,医療者が臓器提供の選択肢を提示する機会を逃していることも,厚生労働省の資料で指摘されています。根本的には,日本の医療教育で臓器提供や終末期に関する教育が不足しており,多くの医師が患者家族に“悪い知らせ”を伝えるスキルを学んでいないという現状があります。