こどものこえを聴くこと。私が小児科医だった頃、自分はこどものこえを聴ける医師だと自負していた。そんな気持ちを変えてくれたのは、成人の緩和ケアの診療の中で出会った患者さんたちだった。
私が初めて緩和ケアチームの一員として病室に伺ったのは、70歳代の男性患者さんだった。部屋に入った私は、無意識のうちに患者さんの傍らにいる奥さまに話しかけていた。キョトンとした患者さんの様子を見て、私はハッとした。小児医療に長く携わる中で、私は知らず知らずのうちに患者さんではなく家族(保護者)と話すことがデフォルトになっていたのである。