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【識者の眼】「コミュニティそのものの看取りを見据えた医療を構想しよう」森井大一

登録日: 2026.07.30 最終更新日: 2026.07.30

森井大一 (日本医師会総合政策研究機構主席研究員)

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「最低限の医療がなければ暮らしていけない」「医療は基礎的なインフラだ」「地域の持続可能性のために医療が重要だ」。どれも確かにその通りである。しかし、それだけでは不十分だったのかもしれない。

国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計に基づき、向こう50年ほどで人口が3割減少することを前提として、行政サービスをそれに見合った形に「適応」させる取り組みが全国の自治体で模索されているとの報道がなされた。「スマートシュリンク」ないしは「賢い縮小」と言うのだそうだ。

しかし、である。「言うは易く行うは難し」というのがこの手の話の見慣れた光景ではなかったか。「適応」とは何か。「スマート」「賢い」とは誰にとってのもので、誰が判断するのか。また、それは医療にとってどういう意味を持つのか。そんな問いの前に、「う〜ん」とうなって下を向いてしまう。

この問いに対して、どのような具体的な対応案を描くのか。人口減少の最前線から、説得力のある出口戦略が出はじめている。中でも、今後の議論の道標となる可能性が高い(と筆者が直感している)のが、阿部智介氏による「過疎地域の持続可能な医療のための『継承』と『縮退』という考え方」1)だ。

この論文がセンセーショナルなのは、コミュニティそのものの消滅を位置づけたことだ。論文著者である阿部氏は、「人口規模や医療需要の変化に応じて医療提供の形を段階的に変化させながら、地域との関わりを維持し続ける姿勢を示す概念」として「縮退」という言葉を用いている。そして、縮退を判断するプロセスについて「個人の人生の最終判断におけるACPに通じるものがある」と述べている。

縮退の具体的な進め方については阿部論文を見て頂きたいが、コミュニティそのものの消滅を正面に据えたリアリズムに圧倒される。とはいえ“コミュニティの消滅”はあまりに重く、当事者にしかできない問題設定だ。もちろん、多くの地域にとって、コミュニティの維持を目的にした医療提供体制はまだまだ重要である。しかし、阿部氏が佐賀県の一地域を例にとって論じた「縮退」は、個別ケースなのだろうか。

筆者(森井)が、「自分は当事者ではない」と気取っていられるのも今のうちだろう。もっと多くの人が、コミュニティ維持の努力の延長線上に、消滅を見据える構えを持つべきではないか。前出の社人研報告をもとに、向こう50年という時間軸を考えれば、あっという間に日本中のあちこちで、この問題が広がっていくのだろう。

消滅と言っても、見切りをつけて切り捨てればよいのではない。コミュニティそのものの緞帳をおろすときに、医療にできることがある。果たすべき役割がある。それを、現場の医療者の孤立と使い捨てではない形で、どのように進めればよいのか。我々の社会のあり様が問われている。

阿部論文によって問題が可視化され、また、同様の問題が普遍化していく見込みがある以上、社会全体でコミュニティそのものの看取りを見据えた医療を構想しなければならない。

【文献】

1) 阿部智介:社保旬報. 2026;26(3003):10-7.

森井大一(日本医師会総合政策研究機構主席研究員)[地域医療][医療提供体制スマートシュリンク

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