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重症熱中症の治療戦略〈やっくん流 Active Cooling〉

登録日: 2026.07.27 最終更新日: 2026.07.27

薬師寺泰匡 (薬師寺慈恵病院院長)

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「熱中症診療ガイドライン2024」において,重症熱中症に対して,従来のActive Coolingでは「目標体温を38.0℃として速やかに冷却することを弱く推奨する」1と記載されています。熱中症では40.5℃以上の深部体温が続くと,予後が悪化します5。ただし,どの程度の体温を目標とするかは議論があるところです。

日本救急医学会が行ったHeatstroke STUDYでは,重症熱中症において後遺症が現れた群とそうでない群を比較し,後遺症群では体温を38.0℃台まで冷却するのにかかった時間が有意に長かったとされています(108.3±93.5分 vs. 67.2±85.0分)1。このため,目標体温を38.0℃として速やかに冷却するという目標がたてられています。また,熱中症と認知してから30分以内に核心温度を40.0℃以下にできれば,死亡率を0まで下げられるという報告もあります16。あらゆる手段を用いて,まずは体温を下げることが重要です。

(1)冷水浸水・アイスプール(cold water immersion)

いわゆる水風呂です。かつてはシバリングを誘発するため冷水(特に氷水)は避けたほうがよいとも言われたことがあったようですが,実は最も効率の良い冷却方法はこれです。氷水につけたところ,0.12~0.35℃/分で冷却できたという報告もあります16。42.0℃の人を39.0℃に冷却するまで,単純計算で最短9分です。しかし,実現が難しいという課題もあります。救急外来にビニールプールをおいて,水を張るしかありません。そして氷をどこから持ってくるかという問題もあります。さらに,モニタリングがしにくくなってしまうという弱点もあります。意識障害がある人を,救急外来で安全に水風呂につけるのは,やや非現実的です。なお,この方法を行う場合は,低体温症に気をつける必要があります。体温が下がりやすいため,10℃以下の冷水に入れる場合は直腸温が38.6℃程度になったら,治療を中断するように推奨されています。

(2)蒸散冷却(霧吹き+扇風機)(evaporative plus convective cooling)

体表面に水を噴霧して,そこへ送風する冷却法です。いわば,気化熱で体温を奪うわけです。多くの医療機関で採用している方法が,これではないでしょうか。実際の細かいやり方については,そのまま裸体に水をかけたり,霧吹きで水を吹きかけたり,ガーゼを当てて水をかけたり,と様々な方法があるように思います。水についても,シバリングを避けるためにぬるま湯を用いたり,常温の水を用いたり,とローカルルールがありそうです。筆者がこれまで働いた施設では,すべて違った方法を取っていました。ですが,送風の方法としては,日本が生んだ夏の風物詩,扇風機を用いている場合が多いのでは……。

なお,蒸散冷却の冷却速度に関しては,0.05~0.31℃/分程度と報告されています17。水風呂に近い効果を発揮してくれそうなのですが,実際のやり方を見ると,15℃の水を噴霧したあと,45℃の温風を体と平行に0.5m/秒で流すという方法でした。まったく同じ方法を取るのは非現実的です。裸体にガーゼを当てて20℃の水を吹きかけて扇風機で送風するという方法では,冷却速度が0.087℃/分と報告されているので,12分で1℃程度は冷却可能です。

(3)胃洗浄(cold water gastric lavage),膀胱洗浄(cold water bladder irrigation)

経鼻胃管や膀胱カテーテルから冷水を注入して,体内から冷却する方法です。どうしようもないときに筆者もやったことがありますが,ここはエビデンスが乏しい領域です。胃管から水を流す際には,水中毒にも注意が必要です。

(4)血管内体温管理療法(intravascular temperature man-agement)

血管内にカテーテルを挿入し,血液を直接冷却することで体温を制御する方法です。中心静脈カテーテルと同じように,大腿静脈や内頸静脈からカテーテルを挿入し,カテーテル内に循環する冷却液と血液の間で熱交換を行います。冷却カテーテルとしてCool LineやIcy Catheter,外部コントローラーとしてThermogard XPやBLANKETROLⅢなどがあります。これらはリアルタイムの中枢体温モニタリングと自動温度調整が可能で,1.0〜2.0℃/時程度の迅速な冷却を可能としつつ,ターゲット体温まで到達した際の過冷却を防ぐこともできます。

設定をすれば長時間の体温維持もできるので,常に人的資源を割かなくてよいというメリットもあります。たとえば先述の蒸散冷却では,誰かが霧吹きで水をかけ続けなければなりません。一方で,侵襲が高いのはデメリットとなりえます。中心静脈カテーテル挿入時と同じく,感染症や動脈をはじめとした周辺組織の破壊の恐れがあるほか,カテーテルの留置による血栓症のリスクを伴います。これを用いたほうが予後改善につながる,という明確なエビデンスまではありません18

(5)体外式膜型人工肺(ECMO)

脱血管と送血管の2本のカテーテルを血管に挿入し,遠心ポンプと膜型人工肺を用いた閉鎖回路の人工心肺装置に血液を通すことで,心肺補助を行うシステムです。日本では経皮的心肺補助装置(percutaneous cardio-pulmonary support:PCPS)とも呼ばれています。呼吸不全の際には中心静脈から抜血して中心静脈に送血するV-V ECMO(veno-venous ECMO)が用いられ,心停止時など循環補助を行う場合にはV-A ECMO(veno-arterial ECMO)が用いられます。体温調節をするだけであればあまりにももったいない介入ですが,心停止時や高体温による心筋障害,不整脈,虚血などで心原性ショックを合併しているとき,また,ARDSで急性呼吸不全を合併している場合などでは適応となりえます。

ECMOを導入する際に,回路内に熱交換器を組み込むことで,血管内体温管理療法と同じように体温を制御することができます。1.0〜2.0℃/時程度の迅速な冷却を可能としつつ,心肺機能の補助も行える,まさに究極の治療法と言えます5。ただし,適応についての明確な指標はなく,また,エビデンスとしても明確なものはありません。これはECMO治療そのものに言えることですが,非常に高コストであり,さらに合併症として血栓症,出血,感染なども十分に考えられる,高侵襲な治療でもあります。普段からECMOの管理に熟練した施設で行わなければ,逆に患者に不利益を及ぼしかねません。年間30例以上のECMO患者の管理を行っているような施設では,年間6例未満の病院と比較すると,死亡のオッズが有意に低かったようです19

(6)ゲルパッド法による水冷式体表冷却(Arctic SunTM tem-perature management system)

水冷式のゲルパッドを体表に貼付し,冷却(加温も可能)を行うものです。脇・胸・大腿などにゲルパッドを貼付し,冷水循環で熱交換をします。体温センサーで膀胱温,食道温,直腸温を測定し,体温変化からフィードバック制御を行うことができます。血管内冷却に比べて侵襲が少ないのが特徴で,それにもかかわらず,およそ任意の体温に制御できるのがメリットです。冷却速度は1.0〜1.5℃/時程度と血管内冷却よりはやや劣るものの,感染症や血栓症のリスクもなく,利用しやすいです。デメリットを挙げるとすれば,皮膚トラブルでしょうか。あとは導入コストが高めなので,何度も熱中症もしくは低体温症の治療をする機会がなければ,ペイされないかもしれません。

※この記事は,FOCUS「熱中症の新しい重症度分類とⅢ度・Ⅳ度の治療戦略」の一部を抜粋・編集したものです。


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