検索

×
絞り込み:
124
カテゴリー
診療科
コーナー
解説文、目次
著者名
シリーズ

【識者の眼】「CKD予防の鍵は“職域と医療の接続”にあり」安藤明美

登録日: 2026.07.24 最終更新日: 2026.07.24

安藤明美 (安藤労働衛生コンサルタント事務所、東京大学医学系研究科医学教育国際研究センター医学教育国際協力学)

お気に入りに登録する

背景:健診制度の改正と医療機関に期待される役割

わが国における慢性腎臓病(CKD)の有病者は、成人の約5人に1人とされています1)。しかし、初期には自覚症状に乏しいため、健康診断で異常を指摘されても医療機関を実際に受診する人はわずか5%にとどまり、約95%が未受診のまま放置されているという実態があります2)

日本透析医学会の統計調査によると、2024年時点の国内の透析患者総数は約33.7万人で、そのうち約40%にあたる約13.5万人が勤労世代(20〜69歳)とされています。人工透析には、1人当たり年間約500万〜600万円の医療費が必要とされており、増加を続ける国民医療費を抑制し、世界に誇る国民皆保険制度を維持するためにも、CKDを予防し、また早期発見・早期介入につなげることは、今後の医療政策上きわめて重要な課題です。

こうした中、労働安全衛生法に基づく一般健康診断では、40歳以上の労働者を対象に「血清クレアチニン」が検査項目に追加されることになりました。これにより、腎機能低下の早期発見は大きく前進すると期待されます。

しかし、構築されたスクリーニング体制を実効性のあるものにするためには、受診勧奨を受けた方を医療機関が適切に受け止め、早期介入へつなげる体制づくりが不可欠です。

かかりつけ医と臓器専門医の連携

心筋梗塞などの循環器疾患では、かかりつけ医と臓器専門医との連携が既に進んでいます。一方、腎機能低下は自覚症状に乏しく、多くの場合ゆっくりと進行するため、臓器専門医への紹介時期が遅れることも少なくありません。予防可能なCKDの進行を防ぐためには、日常診療において健康診断データを積極的に確認し、腎機能の経年変化も意識しながら、適切なタイミングで臓器専門医と連携していくことが期待されます。

近年、複数の診療科を受診する患者が増えており、生活背景を含めて全身を把握・マネジメントする家庭医(プライマリ・ケア医、総合診療医)の役割もますます重要になっています。産業医が初期CKDを疑い医療機関を紹介した後も、適切な予防医療へ確実につながる仕組みが必要です。このような職域と医療の連携強化は、国民の健康維持だけでなく、医療費の適正化という観点からもきわめて重要と言えます。

結びにかえて

職域健康診断における血清クレアチニンの法定項目化に伴い、医療機関が担う重症化予防の社会的責任は今後さらに大きくなります。また、「治療と就業の両立支援」が事業所の努力義務となるなど、職域と医療を分断することなく、切れ目のない予防医療を実現する制度整備も進められています。

CKD対策を実効性のあるものとするためには、産業医、かかりつけ医、腎臓専門医がそれぞれの役割を果たしながら連携し、職域と医療をつなぐ仕組みを強化していくことが、これからの予防医療において強く求められています。

【文献】

1) 日本腎臓学会, 編:CKD診療ガイド2024. 東京医学社, 2024.

2) Yamada Y, et al:J Epidemiol Community Health. 2019;73(12):1122-7.

安藤明美(安藤労働衛生コンサルタント事務所、東京大学医学系研究科医学教育国際研究センター医学教育国際協力学)[産業医][CKD予防医療

ご意見・ご感想はこちらより


1