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【識者の眼】「またひとつ月経困難症治療薬が増えます」稲葉可奈子

登録日: 2026.07.22 最終更新日: 2026.08.03

稲葉可奈子 (産婦人科専門医・Inaba Clinic院長)

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2026年6月、新たな月経困難症治療薬(LEP:低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)である「マルシロンⓇ配合錠」が製造販売承認を取得しました。本剤は世界中で広く使用されてきた実績があり、日本では「月経困難症」を効能・効果とする保険適用薬として登場します。

マルシロンⓇの有効成分(デソゲストレル・エチニルエストラジオール)は、既存の経口避妊薬(OC)である「マーベロンⓇ」や、そのジェネリック医薬品「ファボワールⓇ」と同じです。

大きな違いの1つは、エストロゲンの配合量が従来の0.03mgから0.02mgへ減量されている点です。「超低用量ピル」に分類されるため、服用開始時にみられる吐き気や頭痛など、ピル特有の副作用が軽減されることが期待されます。

もう1つの違いは、マーベロンⓇが保険適用外(自費)の経口避妊薬であるのに対して、マルシロンⓇは「月経困難症」を効能・効果として承認されているため、月経困難症の患者さんには保険診療で処方できることです。

また、従来の低用量ピルとの大きな違いは、24〜80日間の範囲であれば、患者さん自身が服用日数を調整し、いつ消退出血を起こすかをコントロールできるという点です。消退出血の頻度を低下させるだけでなく、受験や仕事、旅行などのイベントに合わせた柔軟なスケジュール設計が可能になります。ホルモン変動による体調不調に振り回されるのではなく、自分でコントロールできるようになることで、女性のQOL向上に大きく寄与することが期待されます。

既存の低用量ピルでも実臨床では同様の服用方法が行われていることがありますが、「24〜80日間連続投与」というフレキシブルな服用方法が添付文書に明記されたのは、マルシロンⓇが初めてです。

マルシロンⓇの承認により、月経困難症治療薬の選択肢はさらに広がりました。「痛みを我慢し、生理で仕事や学校を休む」という時代から、「個々のライフスタイルに合わせて生理を休ませ、自分でコントロールする」というパラダイムシフトが、今まさに起こっています。治療薬の選択肢が増えることは、患者さんにとっても医療者にとっても心強いことです。

既にいくつかの低用量ピルが使用できる環境にある中、決して高薬価ではない領域にもかかわらず、女性のヘルスケア向上のために新たな治療薬を開発し続けて下さる製薬企業の皆様には、心より感謝申し上げます。

稲葉可奈子(産婦人科専門医・Inaba Clinic院長)[産婦人科][月経困難症][低用量ピル]

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