近視(myopia)とは,眼に入った光が網膜上ではなくその手前で結像する状態を指し,遠方視が不鮮明となる屈折異常である。成因により,眼球が前後方向に過度に伸長することで生じる軸性近視と,角膜や水晶体の屈折力が過剰であることにより生じる屈折近視に大別される。臨床的には前者が大多数を占め,成長期に進行する点が重要である。
発症時期の観点からは,小児期に発症・進行する学童近視が最も一般的な軸性近視であり,近年は低年齢化と有病率の上昇が問題となっている。一方,未熟児網膜症では眼軸長伸長を伴わず,前眼部構造の変化に起因する屈折近視を生じることが知られている。
近視が高度化すると強度近視と呼ばれ,さらに進行性の眼軸長伸長により,近視性黄斑症,裂孔原性網膜剝離,緑内障(または近視性視神経症)といった重篤な合併症を生じうる。この段階は病的近視と定義され,単なる屈折異常ではなく,将来的な視機能障害のリスクを伴う疾患概念としてとらえる必要がある。
▶診断のポイント
近視の診断では,自覚的屈折検査と他覚的屈折検査を組み合わせて屈折状態を評価する。自覚的屈折検査は,検査用レンズを交換しながら患者自身に見え方を確認してもらう方法であり,眼科日常診療の基本である。他覚的屈折検査は,オートレフラクトメーターなどの機器を用いて客観的に屈折値を測定する検査で,患者の反応に依存しないという利点がある。
特に低年齢の小児では調節機能が強く,通常の検査では近視が過大評価されることがあるため,ミドリンPⓇ点眼液(トロピカミド・フェニレフリン塩酸塩)とサイプレジンⓇ点眼液(シクロペントラート塩酸塩)を用いた調節麻痺下屈折検査を検討する。また,軸性近視では眼軸長伸長そのものが病態の本質であり,保険適用外ではあるが,眼軸長測定を経時的に行うことで,近視進行や治療効果を客観的に評価できる。
特に強度近視は成人後も生涯にわたって緩徐に進行するという特徴があり,合併症の評価が重要となる。近視性黄斑症には,網脈絡膜萎縮,近視性黄斑部新生血管,近視性牽引黄斑症(網膜分離から黄斑円孔網膜剝離へと進行する一連の病態)が含まれ,慎重な経過観察が必要である。近視性視神経症は眼圧に依存せず視神経障害をきたす病態であるが,緑内障との鑑別が難しい場合も少なくない。
